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【活用事例】探究の高度化・自律化を支える評価と指導の一体化

群馬県立高崎高等学校

【活用事例】探究の高度化・自律化を支える指導と評価の一体化

探究の高度化・自律化を支える指導と評価の一体化

 

探究に必要な「余白」の存在

本校は「3F精神(ファイティング・スピリット、フェア・プレー、フレンドシップ)」を教育目標に掲げる男子校です。2002年度より文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、2024年現在、4期目を迎えています。

 

本校では、1年次に3単位、2年次にSSHコースは3単位、理型・文型コースは2単位、3年次に1単位と、課題研究の時間を豊富に確保しています。これは、生徒が学びのなかで試行錯誤するために必要な「余白」を残すため。不確実で変化が大きい時代を生き抜くには、自ら学びを深め、新たな価値を生み出すための力が不可欠です。うまくいかなければ戻ったり、産学官のさまざまな機関と連携したりしながら、教員がリードするのではなく、生徒同士で学びを深めていける探究の「高度化・自律化」を目指しています。

 

豊富な単位数と3つの型で探究を深める

 

 

読解力の有無や自己肯定感に左右されない評価

探究力測定」(「数理探究アセスメント」+「Ai GROW」)との出会いは2年前。当時は別のアセスメントを活用していましたが、そのアセスメントのリテラシーテストは分析の結果、模擬試験の国語の結果と強い相関が認められ、各リテラシーというより、問題文の読解力を測っている可能性があることに加え、自己評価のみのコンピテンシーテストでは控えめな生徒や自責が強い生徒の結果が低くなる傾向にあったことから、データの信ぴょう性に疑問をもっていました。

 

一方、「数理探究アセスメント」はシンプルな設問であるため、受検者の読解力に依存する可能性が低いと感じただけでなく、われわれが課題研究を通して「できるようになってほしいこと」を生徒に伝える役割としての魅力を感じて導入。「Ai GROW」は相互評価によって、生徒の自己肯定感やバイアスに左右されることなく能力を公正に評価できると感じて導入を決めました。

 

本校の目指す探究の「高度化・自律化」は、教員の過度な介入がなくとも生徒同士で主体的に学びを深めていける状態です。その実現のための手段の一つとして、本校では外部メンターや卒業生、他学年も巻き込みながらフィードバックの機会を多く設け、探究の技術や経験、姿勢を継承する「学びの生態系(エコシステム)」の構築を目指しています。そして、「高度化・自律化」を実現するためのもう一つのポイントが「指導と評価の一体化」です。目指すべき評価基準を理解していれば、定期的な振り返りを通して生徒は自ら課題を発見しながら主体的に学びを深めることができるはずです。

 

本校ではこれまで、

① 探究に取り組む前に探究の考え方を習得する「課題研究ロジックシート」

② 発表に求めるレベルを具体的に示し相互評価にも活用する「発表ルーブリック」

を活用しながら課題研究を進め、

③ 発表に対するコメントを生徒同士で共有する「フィードバックシート」

を評価に活用することで、指導と評価の一体化を図ってきました(下図参照)。

 

▲自作の3つの教材で指導と評価の一体化を図っている

 

 

「探究力測定」導入後は、これら3つの教材に加えて「数理探究アセスメント」と「Ai GROW」の受検により課題研究を通して「できるようになってほしいこと」や「伸ばしてほしい資質・能力」を生徒に明確に示したうえで活動・指導を進め、受検後の個人レポートにより生徒は振り返りを、教員は客観的なデータに基づいた評価を行う流れを作ることができ、探究の「高度化・自律化」の加速につながっています。

 

▲「探究力測定」(「Ai GROW」+「数理探究アセスメント」)によって「高度化・自律化」が加速

 

 

質の高い設問と相互評価が課題を解決

「数理探究アセスメント」の結果を見てみると、想定していた通り、国語と数学の模擬試験の結果との相関に差はなく、生徒の読解力がアセスメントの結果に与える影響が低いことが分かりました。また、計測できる4スキル(課題設定力、実験計画力、考察力、創造力)間の相関も低く、各スキルを独立して評価できそうだと期待しています。他のスーパーサイエンスハイスクール指定校や全国平均と比較できる点も、本校の強みや課題を把握するうえで役立ちます。

 

「Ai GROW」の結果を学年間で比較してみると、1年生と2年生では大きな差はなく、2年生から3年生で高くなる傾向があることが分かりました。入学後、周囲の生徒から刺激を受けながら己を知り、探究をはじめとしたさまざまなプログラムで力を伸ばしながら自信をつけ、3年生でそれぞれの花を大きく開かせる、という本校の生徒の成長の軌跡に対する教員の実感値とも合致しています。心配していた自己肯定感が低めの生徒のスコアも、自己評価は低くても相互評価で個々の強みがしっかりと可視化され、公正な評価が行えるようになったと感じています。

 

私たちが学生の頃は、評価は一方的に、大人から理由も分からないまま告げられるものでした。しかし、評価は本来「できてほしいこと」を生徒に伝え、できていること、できていないことをリフレクションし、次の課題を見つけるという一連のサイクルです。この評価のあるべき姿や探究の「高度化・自律化」の実現、そして、その先にある生徒の生き抜く力の育成に向け、「探究力測定」とともにこれからも歩みを進めていきたいと考えています。