トップへ
【活用事例】】課題研究の成果の把握とプロセスの評価に欠かせない外部指標

横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校・附属中学校

【活用事例】課題研究の成果の把握とプロセスの評価に欠かせない外部指標

課題研究の成果の把握とプロセスの評価に欠かせない外部指標

 

本校は、2009年に開校した比較的新しい学校です。2017年には附属中学も開校。横浜市の進学指導重点校でもあり、毎年、国公立大学に現役で100名程度が進学しています。開校2年目からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定され、第3期の4年目を迎えました(2023年度)。

 

本校における課題研究の名称は「サイエンス・リテラシー(以下、SL)」。共通プログラムで探究の基礎を学ぶSLⅠ(高校1年次)、6つの分野に分かれ個人研究と年3回の発表を行うSLⅡ(高校2年次)、研究をさらに深め、学会発表や進路実現につなげるSLⅢ(高校3年次)と、学びを段階的に進めていきます。予測不可能な状況でも問題の本質をとらえ、チームで協働して知識を知恵につなげ、正解のない問いに対して最適解を模索できる人材を育成することを目標としています。

 

SLⅢでは、文部科学省とJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)が主催する「SSH生徒研究発表会」での成果発表も行いますが、2022年度は、本校の研究発表が最高賞となる「文部科学大臣表彰」に選ばれました。研究発表会での成果はもちろん素晴らしいことですが、「失敗も含めた研究プロセスこそが大事」「生徒の主体的な取り組みを尊重すべき」という考えも主流になりつつあります。

 

しかし、そこで問題になるのが、これらの適切な評価。プロセスや取り組みへの態度を評価するうえで欠かせない課題発見力、探究心、ねばり強さなどといった能力・資質の変容は、可視化が難しいからです。客観的な評価を実現するためにも、SSHの成果を定量的にまとめるためにも、非認知能力を測定する外部指標を導入したいと考えました。

 

 

初年度に導入した外部指標は、受検に時間がかかり、フィードバックの内容が薄く、データの「活用」に大きな課題がありました。受検料を負担する保護者の視点から見ても納得性は低いであろうと考え、この評価ツールの活用は1年で終了しました。その後、費用対効果や指導に活用するうえでの有用性の観点から再検討を進め、2021年度から活用しているのが「Ai GROW」です。

 

「Ai GROW」は、受検が完了すると管理画面や個人レポートから成長記録をすぐに見られるだけでなく、エクセルでデータを加工することなく、学年や性別、出身中学校別にデータを簡単に比較できるなど、日々の指導での活用に必要な機能が揃っていて、とても助かっています。また、「Ai GROW」で計測できるコンピテンシーは本校がSSHの課題研究で育みたい力と親和性が非常に高いだけでなく、その評価データは教員の実感値と近く、信頼が置けると考えています。そのうえで費用も初年度に導入した評価ツールの半分以下に抑えることもできました。

 

また、本校はマレーシアのプトラ大学との国際共同研究の取り組みで、2023年度のSSH重点枠指定校にもなっています。生徒はプトラ大学の学生と共同研究チームを編成。オンライン・ミーティングを定期的に行いながら研究・実験を進め、長期休暇にはマレーシアでの研修も実施していますが、この共同研究に参加している生徒たちの「Ai GROW」の結果を見てみると、決断力、自己効力、共感・傾聴力、表現力といったコンピテンシーが他の生徒よりも高い結果となっています。

 

これが共同研究による成果なのか、共同研究のメンバーに選出されるうえでこれらのコンピテンシーが重要な要素になっているからなのかについては、データを積み重ねていかないとはっきりと分かりませんが、引き続き「Ai GROW」を活用して共同研究による生徒の成長を明らかにし、エビデンスに基づいたプログラムの改善、他校への成果の普及を行っていきたいと考えています。

 

リンク:
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校・附属中学校
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/hs/sfh/