注力する探究の加速に欠かせない多面的な成長データ
本校は、1994年(平成6年)に全国初の公立中高一貫教育校として開校しました。その後、学校教育法の一部改正を受けて、1999年(平成11年)に校種を変更した全国初の中等教育学校です。
開校当初より、地域と協働した探究活動(フォレストピア学習)を核とし、「地域に根ざしたローカルな学び」を体験的かつ探究的に実践してきました。2014年度に「スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)」、2019年度に「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型:G型事業)」に指定されたことを受け、グローバルの視点を取り入れた「グローバルフォレストピア探究」として教育カリキュラムを再編成。2023年度からは文部科学省「新時代に対応した高等学校改革推進事業(創造的教育方法実践プログラム)」の指定を受け、「VUCA時代を生き抜く野性味あふれる『「価値創造人材』」の育成」を目標に、育みたい力として「関連づける力」「問う力」「見る力」「試みる力」「繋がる力」の5つを掲げています。
探究に力を入れる中でその評価をどうするべきか、ということは常に大きな悩みの一つでした。これまでは自己評価アンケート「ICEモデル」を活用してきましたが、自己評価だけでは、探究で重視したい「過程」の評価が難しく、生徒も探究を通した成長を実感しづらいという課題がありました。こうした探究の評価に対する課題を感じていたとき、エントリーした「観光甲子園」で評価ツールとして採用されていた「Ai GROW」と出会ったのです。
相互評価とAI補正により客観的で信頼性の高い評価が実現できるということ、1年間に何回でも受検が可能で目的やスケジュールに合わせて柔軟に活用できることに特に魅力を感じ、「Ai GROW」の導入を決めました。実際に活用してみると、われわれ教員が個々の生徒の強みと感じていたポイントはもちろん、これまではうまく言語化できないことも多かった「この生徒は学力だけではない、もっといろいろな力をもっているのに……」という実感を可視化でき、生徒理解を深める一助となっています。
「Ai GROW」には、計測可能な25種類のコンピテンシーを組み合わせることで学校独自の育みたい力を定量化できる「学校コンピテンシー」機能があります。本校が育みたい力として掲げる「関連づける力」であれば、「課題設定」と「論理的思考」と「柔軟性」の組み合わせで可視化しており、管理画面から成長を定量的に把握することができるようになりました。
▲管理画面から学校独自で設定する資質・能力も定量的に把握できる。
「Ai GROW」導入前後、「Ai GROW」を本校よりも前から活用する熊本県立宇土中学校・宇土高等学校を訪問させていただく機会があり、そこで同校の先生から「数理探究アセスメント」の紹介を受けました。注力する自校の探究の成果を同時期に受検する他校と比較できるこのアセスメントなら、探究における本校の強みや課題がより明確になるのではないかと考え、「Ai GROW」と併せて活用することに決めました。「数理探究アセスメント」の受検結果を見ると、強みを再認識することができた一方、課題設定力に課題があることも明らかになりました。この結果から今は課題設定力の向上を目標に据え、探究プログラムの再設計を進めています。
現在は、新しい学年での体育祭が終わり落ち着いて探究に向き合い始める6月頃、探究の途中段階である11月頃、学年末の探究発表会を終えた年度末の3月頃に「Ai GROW」を、夏と冬に「数理探究アセスメント」を受検する体制を整え、そのサイクルを回し始めたところです。本校は、山、自然、地域の恵みに囲まれた環境を生かし、ローカル(中山間地域)からグローバル(国際社会)で活躍できる「野性味あふれるグローバル・リーダー」の育成を教育目標に掲げています。「Ai GROW」や「数理探究アセスメント」で本校の生徒の強みや成長を定量的に把握していくことにより教育の効果や学校の魅力を外部に発信できるようになるのではないかと考えています。また、各取り組みの効果検証と改善を進めることで、より実りのある、本校ならではの探究型学習を形作っていけるのではないかと思っています。コロナ禍でここ数年は外部との連携も限られていましたが、ようやくさまざまな活動が戻ってきました。野性味あふれるグローバル・リーダーの卵たちの成長を、実感だけでなく、数値としても見られるのを楽しみにしています。
リンク:
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校
http://gokase-h.com/