進路選択・実現を後押しするキャリア教育支援ツール
本校は山形県新庄市にある県立の高等学校です。「清楚 誠実 進取」を校訓とし、109年の歴史を積み重ね、これまでに20,000名近い卒業生を送り出してきました。
本校では以前から総合型選抜入試(旧 AO入試)や学校推薦型選抜入試(旧 推薦入試)での進学を希望する生徒が多く、半数以上の生徒の進路が年内に決まります。近年、その傾向がより強まるなか、「いいものをもっているのに、それを自分で把握できていない」「自分の強みを他者に語ることができない」生徒が多いこと、それに対して具体的な対策が取れていないことに課題感を感じていました。この状況を変える良い方法はないかと思っていたとき、「Ai GROW」のことを知ったのです。
ちょうど新しい学習指導要領に移行するタイミングで、従来のペーパー・テストでは測ることが難しい資質・能力の評価も必要になることに危機感を抱いていたこともあり、新しいカリキュラムの対象となる学年から「Ai GROW」を導入しようと準備を始めました。しかし、導入に向けたさまざまな説明をIGS社から聞くなかで「これは年度途中からでも、上の学年にも導入した方が良いのでは」と感じるようになり、年度途中から2年生も追加で導入することに。年度途中に予算を捻出することは容易ではありませんでしたが、保護者会で「これからのキャリア教育には自身の強みの把握が欠かせない」ことを説明し、保護者から理解を得ました。「Ai GROW」導入2年目となる2023年度からは新1年生も加え、全ての学年で活用しています。
実際に活用してみると、 これまでわれわれ教員が感覚的にとらえていた生徒の個性が数値化されることで「やっぱり!」と納得することも、担任でも把握できていなかった生徒の強みに気付かされることもあり、両方の驚きがあります。特に、生徒数が多いクラスではどうしても目立つ生徒に目がいき、おとなしい生徒の特性把握が難しくなりがちですが、「Ai GROW」によっておとなしい中にも内側にある芯を見つけることができ、その強みや魅力を声掛けに生かしたり、それをさらに伸ばす方法を一緒に考えられるようになったり、日頃の生徒指導や生徒との対話にとても役立っています。 入学時、自信不足気味だった生徒も一定数いるなか、成長をさまざまな角度から見取り、褒めて自信をつけさせることができるようになったことは、「Ai GROW」導入の大きな効果の一つです。
受検結果からコンピテンシーごとにスコアの高い生徒を見ていると、生徒会活動やボランティア活動などを頑張っている生徒はもちろん、われわれ教員が成績とは関係なく「生きる力がある」と感じる生徒が多くの項目で上位に入っています。また、「疑う力」のスコアが高い生徒はいわゆるおとなしい生徒が多い印象を受けました。おとなしく見えてもきちんと思考しながらものごとを判断できているということだと思いますが、大勢の生徒を前にした状態ではなかなか見取ることが難しい能力なので、このような強みを客観的に把握できるようになったことも生徒指導上、大きな意味があります。さらに、「共感・傾聴力」の上位には看護・医療分野を目指す生徒が多く入っており、進路に向けた強みとして生かしてもらえたらいいなと思っています。「どの道を選んだらいいか分からない」という生徒も一定数います。そういう生徒には「Ai GROW」の受検結果を元に、自身の強みを生かせそうな進路を考えてみるようアドバイスしています 。
これまでのところ年4回のペースで受検を進めていますが、学年全体のスコアの変化を箱ひげ図で見てみるとどのスコアもプラスに変化しています。学校の教育活動にとどまらない地域の人々とつながる取り組みへの参加、保護者の温かい理解と応援、「Ai GROW」により生徒理解を深めたうえでの面談、そして何よりも、生徒一人ひとりが「Ai GROW」の受検結果をしっかりと振り返り、コンピテンシーを伸ばす意識を明確にもって学校生活に取り組めるようになったことが、こうした成長につながったのではないかと考えています。特に大きく伸びているのが「自己効力」。入学時の心配の種であるこの能力が大きく伸びていることは、われわれ教員にとってもとてもうれしく、励みになる結果でした。
▲担当学年の2年時と3年時の「Ai GROW」測定結果比較
(各項目の箱ひげ図の最小値や中央値が上昇。
学年全体でのコンピテンシーの成長を確認することができる)
総合型選抜では、自分の強みを知り、それを探究活動などをはじめとする高校での学習歴や経験とリンクさせ、志望動機を語る必要があります。そのために重要となるのが振り返りです。本校では「Ai GROW」の付属品でもある「振り返りシート」を活用しています。高かったコンピテンシーと成長したコンピテンシーについて、その理由を考え記入するこのシートと繰り返し向き合うことで、生徒たちが強みをこれまでの経験とリンクさせ、実際の入試で説得力をもって自身について語ることができるようになるのではないかと期待しています。これは生徒だけでなく、推薦書を作成したり、志望理由書の添削を行ったりするわれわれ教員にとっても大きなアドバンテージになるはずです。
▲生徒が実際に書いた「振り返りシート」の一例。
相互評価によって自身の強みを客観的に把握し、
成長に寄与した経験を整理する機会につながっている
すでに大きな効果と期待をもたらしている「Ai GROW」ですが、今後も継続して活用して本校の学校生活全体での成長を可視化しまとめ、卒業時に渡す資料や中学生向けの広報の素材としても活用していきたいと思っています。また、学校としてデータの蓄積を進め、入試の結果や進路との相関分析もしてみたいと考えています。そして何よりも「Ai GROW」の結果を通して自分と向き合った経験が、生徒たちが入試方法や大学だけではなくその先の進む道に目を向け、その歩みを支え続けてくれる礎となってくれたらと願っています。
リンク:
山形県立新庄南高等学校
http://www.shinjominami-h.ed.jp/htdocs/