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【活用事例】生徒、保護者、教員の三者をつなぐ対話ツール

宝仙学園中学・高等学校

【活用事例】生徒、保護者、教員の三者をつなぐ対話ツール

生徒、保護者、教員の三者をつなぐ対話ツール

 

本校は東京都中野区にある私立中高一貫校です。2007年に「物事を論理的に考え伝えることのできる力(=理数的思考力)」と「人と人とをつなぐ力(=インター)」を育むことを目的とした「共学部理数インター」を設置。従来の女子校を「女子部」として2部門併設の共学校となりました。

本校の特徴の一つが日本一種類の多い中学入試。知識の量だけではなく、それまでの学習歴を評価するという姿勢を大切にしています。一方、勉強を頑張りたい生徒も、それだけがすべてではないと思っている生徒もいる中、多様な生徒たちにどのように寄り添うかということは、本校にとって大きな課題の一つです。生徒が私たち教員に見せてくれる顔はすべてではありません。もともと探究型学習の効果測定のため導入した「Ai GROW」ですが、私たちには見えず友人同士のやり取りの中で発揮されている強みやその生徒が内側に秘めている特性を把握できることは、非常に大きな効果をもたらしています。

 

面談における「Ai GROW」受検結果の活用

保護者との関わりの中で大切にしているのも、保護者といえども普段なかなか目にできない子どもたちの顔を知ってもらうこと。保護者会では、教員が生徒たちについて語るよりも、生徒が友人に見せる顔の動画を制作して見てもらったり、行事などで生徒が撮影した写真を見てもらったりするなど、学校で生き生きと過ごしている姿を感じてもらえるようにしています。

生徒が自分に関するプレゼンテーションを行うことからスタートする三者面談でも、生徒の学校での姿や成長を伝える資料として「Ai GROW」のデータを活用しています。通常、生徒には詳細なスコアが分かる「自己成長支援版」の個人レポートを返却していますが、保護者にはスコアが表示されず強みだけが分かる「強み発見版」の個人レポートをお渡ししています。多感な年頃の生徒たちにとって、なんでも親に筒抜けなのではなく、自分の良いところを伝えてくれるんだと安心感をもってもらいたい、そして、保護者にも子どもの良いところに着目してもらいたいという思いからです。

「Ai GROW」の個人レポートには気質診断の結果も表示されますが、結果を見た保護者が遠い目をしながら幼い頃の様子を話してくださることもあります。反抗期を迎えている生徒が、懐かしそうに昔話をする親の横顔を照れくさそうに見つめる姿も垣間見れ、とてもいい時間だなと感じています。

また、コンピテンシーの相互評価ですが、本校では、中学3年生からは相互評価してもらう相手を自分で選ばせています(中学2年生は事前アンケートをもとに決定)。自分が選んだ友人に評価してもらうと、受検結果をより真剣に受け止められるようです。面談では、クラスメートが良いところをいかにたくさん見つけてくれているかという観点を重視し、結果に沿ったエピソードを具体的に話すようにしています。我が子が友人から良いところを認めてもらいながら学校生活を送っていることが分かる客観的なデータを目にして嬉しくない保護者はいません。こうした面談は保護者からも大変好評です。

「Ai GROW」に出会う前は、模擬試験の結果を元に面談を行っていました。しかし、模試の結果は一目瞭然ですし、できないことを指摘しても、生徒のモチベーションを上げることにはつながりません。それよりも、強みを認識してもらい、それをさらに生かしていくためには何をやったらいいかと本人に考えてもらうことが重要だと考えています。人から与えられた目標ではなく、自分で定めた目標に向かうことで、生徒のモチベーションも大きく変わってきているのを感じています。

▲面談では、学校で生き生きと過ごしている姿を感じてもらえるよう
「Ai GROW」の結果レポートを元に具体的エピソードを話している。

 

生徒やクラスの「今」の状態を明らかに

「Ai GROW」導入前から、学級開きでは必ず、マインドセットに関する話をしてきました。「自分は変われる」と信じ、うまくいかないことがあっても落第ではなくまだ到達していないだけ、と考え、挑戦できる心を大切にしてほしいと願っています。

「Ai GROW」の導入検討時、オプションの「傾向チェックテスト」でこのグロース・マインドセット(自分がもっている能力や才能は、経験や努力によって成長させることができるという考え方)も可視化できることを知り、渡りに船と「傾向チェックテスト」の導入も決めました。

「傾向チェックテスト」ではグロース・マインドセットだけでなく、学校生活や他者との協働において担保されるべき心理的安全性も計測することができます。計測結果は受検完了の翌日には管理画面から確認ができますが、クラスの心理的安全性の分布を示すグラフにマウスを合わせると、生徒の名前がポップアップするようになっています。定期的に計測を行う中で心理的安全性が下がった生徒を見つけ、声掛けするなど、クラスのセーフティー・ネットとして活用しています。

▲心理的安全性の変化も個人はもちろん、クラスや部活、コースといった集団でも確認できる。

 

「傾向チェックテスト」のデータを見るうえで注意したいのは、スコアが低いから悪いということではない、ということです。生徒を取り巻く環境や、もともとの性質もあります。例えば、生徒2名の自己効力感のスコアが21と17だった場合、スコアの低い17の生徒を心配しがちですが、注視すべきなのは、スコアが前回の計測時から大きく下がっている生徒。そのような変化を見逃さず、「選抜クラスがプレッシャーになっていない?」など、その生徒の状況に合わせた声掛けやフォローができるようになります。

このように「傾向チェックテスト」は、日頃の生徒指導や学級運営で重要となる生徒個人とクラスの状態の変化を数値で確認できるありがたい機能です。

 

▲管理画面では直近の計測結果の確認だけでなく、一つ前の計測結果からの変化の確認も容易に行える。

 

「Ai GROW」で計測できる能力は、答えのない社会かつ人は完全には分かり合えないという前提の下で生きていく中、人と対話を重ねながら折り合いを付けていくために必要不可欠な力です。

学力の3要素の中でもピラミッドの上部に描かれることが多い「主体性・多様性・協働性」ですが、私は本来、これら力は土台として描かれるべきだと考えています。これら力が土台としてあり、その上に思考力・判断力・表現力が育っていれば、生徒たちは自ら進んで学ぶことができます。

私たち教員の役割は、生徒を見守ること。これは、今も昔も変わりません。その裏付けになる「Ai GROW」のデータが加わったいま、生徒への寄り添い方は大きく変わりつつあります。見えないものを見ようとして、認めて、励まして、育む。それが生徒を支えるということだと、私は考えています。今後も「Ai GROW」を活用しながら生徒たちと深く向き合っていきたいです。

 

リンク:
宝仙学園中学・高等学校
https://www.hosen.ed.jp/