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【探究への道 第52回】小黒淳一先生(佐渡市立両津中学校)

探究への道バナー

佐渡から広がる探究の輪~学校一体でつくる地域貢献イベント~

小黒先生 ̳リサイズ

小黒淳一先生


この記事から分かること

  • 生徒が自ら問いを立てる学びづくり

  • 地域との連携で深める探究活動の進め方

  • 学校全体を巻き込んだ発表活動の方法と効果



主体性と協働で育む探究的な学び

本校は佐渡島の玄関口に位置する全校生徒160名ほどの学校です。「自律 躍動 協力」の教育目標の下、「誰にでも居心地が良い学校」「学ぶ喜びが実感できる学校」「生徒が主役となり活躍する学校」を目指しています。

総合的学習の時間で特に育みたいと考えている力は、

(1)自ら課題を発見したり設定したりする力(問題発見能力)
(2)さまざまな情報を収集・吟味して処理・活用する力(情報処理能力)
(3)活動を通してさらに課題を追究して自分なりの新しい考えをもつ力(追究能力)
(4)発表やレポートなどを通して他の人に分かりやすく伝える力(表現力)

です。身近なことも世界のことも持続可能な暮らしの観点から課題とそのつながりを理解し、公正な社会の創造のために、地球的課題の解決に向けて主体的・協働的に足元から行動できる生徒の育成を目指します。

課題提示では、「何をするか」という前提ありきではなく、「何のためにするのか」「なぜするのか」という目的や根拠を大切にしたいため、生徒自ら問いを立てる場面や自分とのつながりを考える場面を設定するようにしています。

課題を深掘りするための追究の場面では、こちら側からレールに乗せたり型にはめようとしたりせず、生徒の主体性や学び方を尊重し、生徒の学びや状況を見取りながら、相談に乗ったり、問い掛けたり、あえて何もしないことを心掛けています。また、多くの場面で、教員だけではなく、さまざまな地域の人材や機関と連携しながら取り組むと、生徒の意識が高まり、学びが深まると思います。

写真1 大学生による国際理解ワークショップの様子
▲大学生による国際理解ワークショップの様子。



探究活動の設計とイベントを通した学習の集大成

3年生の総合学習では、これまでの学習の集大成となる「地域貢献活動」を設定しています。このような活動は地域の清掃活動などに取って代わることがよくあります。そういう画一的なものではなく、郷土や地球の未来を見通し、地球市民としてできることを考えて実行するような探究活動にしたいと思い、次のように設計しました。

(1)ガイダンス<7月>
(2)共通学習<7月〜9月>(【 】は関連テーマ)
   ・全校SDGs学習「水と食」【水、食、食品ロス、食料自給率】
   ・起業家による職業講話【高齢者、食、福祉、家事】
   ・平和学習『はだしのゲン』【平和、公正、差別】
   ・大学生による国際理解ワークショップ「プラごみ」【環境、海】
   ・新潟県による環境学習【地球温暖化、脱炭素】
   ・佐渡市子ども若者課ワークショップ【地域、人権】
(3)課題設定とテーマごとに班編成<9月>
   共通学習はもちろん、2年時の職場体験や3年時の修学旅行も想起させ、上記の【 】内の
   テーマやSDGsの視点も示しながら、個人で興味のあるテーマや課題を設定し、グルーピン
   グする。
(4)課題の調査・追究<10月>
   課題がおよぼす影響、課題を引き起こす要因、理想の状態、解決策などについて、共通学習
   の内容、本、新聞、インターネット、インタビューなど、複数の情報源から根拠を基に追究
   する。
(5)企画<10月>
   解決策のいずれかについて、具体的に実施期日・場所・内容・協働相手・検証方法などを考
   え、必要に応じて企画内容を他者に紹介して練り上げ、実施に向けて準備する。
(6)アクション<10〜11月>
(7)振り返り・まとめ<11〜12月>
(8)発表<12月>

上記のように考えていましたが、計14班が企画を立てるに当たり、それぞれの班が各アクションを起こすよりも、同じ日時で実施した方が集客や効果が見込め、教員の負担も軽くなると考え、「両中フェス」という名のイベントを12月4日の5・6限目に学校内で開催することになりました。

写真2 生徒が作成した「両中フェス」のポスター
▲生徒が作成した「両中フェス」のポスター

 



生徒がのびのびと活動できる環境づくりを目指して

「両中フェス」では、各班が教室や体育館などにブースを開き、水の大切さ、佐渡で捕れる魚の紹介、海ごみの現状、資源の再利用、ごみの分別、地域を知るカードゲーム、福祉体験、幼児の遊び場、動植物すごろく、鬼太鼓ワークショップ、みんなで楽しめるスポーツ、平和や平等に関するクイズラリーなど、教員が予想もしなかった工夫を凝らした課題解決に向けた試みを展開しました。平日のため地域の方の参加は少数でしたが、1・2年生が楽しそうにブースを回り、いきいきと取り組む3年生の姿が大変印象的でした。

探究活動は先が見えづらく不安もありますが、先生自身がまずはワクワクして取り組み、生徒との信頼関係を土台に、自由度と多様性が担保されている環境を整えることが大切だと思います。また、一度の探究活動で成功させようとせず、失敗から学んで次の探究に生かすスタンスをもつと、肩ひじ張らずに取り組めるのではないでしょうか。「実際にやってみる」というリアルな経験がとても大切だと思います。

写真3 伝統芸能班による鬼太鼓ワークショップの様子
▲「両中フェス」で伝統芸能班による鬼太鼓のワークショップの様子。

佐渡市立両津中学校
http://ryoutsu-js.sado.ed.jp/