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【探究への道 第37回】西山正三先生(宮崎県立宮崎東高等学校 定時制課程夜間部)

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定時制だからできる探究型学習への挑戦

nishiyamasensei

西山正三先生


この記事から分かること

  • 定時制高校における探究型学習の具体的な実践例

  • コミュニケーションが苦手な生徒に探究型学習がもたらす価値

  • 「自己探究」「社会探究」「進路探究」と進む探究型学習のステップと内容

  • 地域や大学、外部専門家との連携が探究型学習にもたらす効果


定時制における探究型学習への挑戦

本校は2024年度に50周年を迎え九州初の単位制の高校です。「総合的な探究の時間」は学習指導要領改訂前の6年前から先行実施しており、「定時制でもできる、定時制だからこそできる探究学習」をテーマに、年々取り組みを進化させています。



定時制夜間部の生徒が抱える課題と探究型学習の意義

本校の定時制夜間部には、不登校を経験した生徒が多く在籍しており、自己肯定感が低く、他者とのコミュニケーションや主体的な活動を苦手とする生徒が多い傾向が見られます。しかしそれは、生徒たちの能力が低いということではありません。5教科以外の分野で高い能力を持つ生徒も多く、「総合的な探究の時間」を利用して生徒一人ひとりの興味や能力を引き出すことで、生きがいを感じられる活動・指導を軸に取り組んでいます。



年次ごとに進化する探究プログラム

1年生では「自己探究」として自分の興味や好きなことを見つけるワーク(月からの脱出、マインドマップ、マンダラート、哲学対話、5W2Hなど)を実施し、課題設定まで行います。哲学対話では東京大学の梶谷真司教授を迎え、生徒の思考力や視点を広げる力を引き出すよう指導いただいています。

2~3年生では「社会探究」として探究活動を進め、得られた知見をまとめて発表。さらに、3~4年生では「進路探究」として、探究活動を通じて得たスキルや経験を自身の進路につなげていきます。

※探究と進路の関係の詳細については以下のURLの記事をご覧ください。
https://view-next.benesse.jp/view/web-hs/article14677/


 

生徒の成長を支える外部との連携

本校では毎年、公開授業や成果発表会などを通じた外部との意見交換を実施しているほか、探究のプロセスを重視した「過程重視探究発表会」や文部科学省が推奨している「過程を重視した評価」にも取り組んでいます。また、今年度からは教員志望の宮崎大学の学生が指導に参加。国際シンポジウムでの最優秀賞受賞や、「Global Link Singapore 2024」での発表なども経験し、外部との連携も生かしながら自信をもって生き生きと学び、発信する生徒たちの姿を多く目にするようになりました。

この他、台湾の台南応用科技大学との交流や、宮崎県のキャリア教育コーディネーターからの助言、探究学習に精通している一般社団法人Glocal Academy代表の岡本尚也氏、宮崎県のSDGsの第一人者である株式会社シンク・オブ・アザーズ代表取締役の難波裕扶子氏による定期的な指導など、さまざまな取り組みも進めています。



生徒の声が語る探究型学習の価値

また、昨年度1月には文部科学省中央教育審議会「高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第4回)」に生徒とともに登壇させていただく機会にも恵まれました(生徒が登壇することは珍しいことだそうです)。そこで、小中学校時代は不登校であった生徒が、「週1回の『総合的な探究の時間』があるから今、学校に来られている」と話しました。この言葉にも、探究の取り組みが生徒の成長だけでなく、学習モチベーションにも良い影響を与えたことが表われています。

また、学習活動に主体的に取り組み、探究活動を通して思考を深め、視点を広げた経験を自身の進路選択にもつなげることができる生徒が増えてきたことも嬉しい成果の一つです。

※高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第4回)議事録は以下URLより
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/091/gijiroku/mext_00003.html



定時制だからこそできる探究型学習の可能性

本校の探究型学習は、『教育が変われば、社会が変わる』(KADOKAWA)、『ひとはもともとアクティブ・ラーナー!』(北大路書房)、『シリーズ 学びとビーイング2』(りょうゆう出版)など、多くの媒体にも取り上げられる注目の取り組みです。これからも「定時制でもできる定時制だからできる探究学習」を本校の強みとして、全職員、全生徒で探究の取り組みを続けていきたいと考えています。

※本校の探究学習活動に関する取材記事
https://view-next.benesse.jp/view/web-hs/article28004/