【第45回】2025年5月配信 樫本英人先生(長崎県立長崎東中学校・高等学校)

本校は、長崎県にある公立の併設型中高一貫教育校で、普通科と国際科を設置しています。これまでに文部科学省からスーパーグローバルハイスクール(SGH)およびWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業の指定を受け、グローバル教育の推進に力を注いできました。現在は高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)の採択を受け、デジタル時代に対応した学びの改革を加速させています。
DXハイスクール採択校としての主な取り組みの一つが、データリテラシー教育の推進です。具体的には、数学において「統計とデータサイエンス」という新たな学校設定科目を導入し、データに基づいて考え、判断し、表現する力を育成しています。さらに、生成AIの活用なども含めた情報活用能力の育成を計画し、生徒の主体的な学びを支えるデジタル環境の整備が進んでいます。また、令和6年度には長崎県のイノベーションハイスクールにも指定され、授業日でも休業日でもない“第3の学びの日”として「ひがしチャレンジデー」を導入しました。この特別な1日は、生徒と教員が自ら時間の使い方を考え、「学び」「休息」「挑戦」のバランスを自律的にデザインする新しい教育実践です。
本校では、すべての教育活動を通して、生徒に身に付けてほしい7つの資質・能力として「課題発見・解決力」「創造力」「情報分析・活用力」「自己表現力」「協働性」「学ぶ意欲」「地球市民性」―を掲げています。これらは「WWL7」とし、スクール・ポリシーにも明記しています。「WWL7」は、生徒と教員が共有する“学びの共通言語”として機能し、年2回の自己評価を通して成長を振り返る仕組みも整えています。
▲長崎県立長崎東中学校・高等学校のグランドデザイン
本校の探究型学習は、「世界の平和と共生に貢献するイノベーティブなグローバル人材」の育成を目指しています。変化の激しい世界に向き合い、自ら立てた「問い」を探究する中で、生徒は「自分が世界で果たすべき使命は何か」といった、自己への深い問いへと向かっていきます。探究のプロセスでは、研究者や専門家の講義を通じて基礎的な教養や視点を身に付けた上で、問いを設定し、多様な外部機関と協働しながら調査・分析を行います。探究のサイクルを1・2年次で繰り返すことで、生徒はスキルとマインドを体系的に獲得。さらに、得た学びを後輩に還元する「探究ピア・サポート」や、校内外での発表を通して、探究の成果を社会に発信するフェーズへと発展していきます。生徒は、単にアイデアを出すだけでなく、その実現可能性にも目を向け、実社会と接点を持ちながら、学びを行動に結び付けていきます。
▲本校における「問い」を定義した図
▲新しい平和教育を発信するため、絵本制作のクラウドファンディングも実施
▲令和6年度のWWL全国高校生フォーラムでの発表の様子
また、探究活動の中でも特に高度な実践を担うのが、SIL(Super Innovative Leaders)と呼ばれる特別チームです。このチームでは、国内外の大学や企業と連携しながら、高度な探究学習や国際交流を推進。知識を得るにとどまらず、実社会とつながりながら「自ら行動すること」を重視しています。2024年度には、Nagasaki Peace-Preneur Forumや国連軍縮部での発表、ハワイやベトナムで課題解決型研修などを実施し、生徒たちは「世界を動かす力は自分たちにもある」と強く実感しました。
▲ ベトナムのフィールドワークで説明を受ける様子
こうした取り組みは、「総合的な探究の時間」だけでなく、教科においても探究的な学びを取り入れ、新たな学びを全校的に進めています。生徒が問いを立て、情報を集め、仲間と議論しながら答えを導き出していくプロセスは、まさにこれからの時代に必要な学びの姿です。正解のない問いに挑戦する中で、考える力、伝える力、そして人とつながる力を育んでいます。
▲ 数学探究の様子
長崎県立長崎東中学校・高等学校
https://www.news.ed.jp/higashi-h/index.html
公式note
https://n-higashi-edu.note.jp