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【探究への道 第15回】武善紀之先生(日出学園中学校・高等学校)

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生徒の問いと教師の多様性が動かす学び

hinodegakuen
武善紀之先生

この記事から分かること

  • 探究の入り口となる「問いを見つける力」の育て方
  • 生徒の自由な発想を引き出す「悪ノリ実習」の具体例
  • 教員の多様性が探究を深める土壌になる


小中高が共に学ぶ、温かな学びの環境と探究の取り組み

本校は、千葉県市川市にある共学の私立中高一貫校です。同敷地内には小学校も併設されており、共用の施設も多く、校舎内で小学生の集団と中高生がすれ違うこともしばしばあります。おそらくそんな環境の生み出す、どこかほのぼのとした空気が本校の特徴です。中高それぞれで週1時間程度の「総合探究」の授業を設定しており、毎年数名の担当教員が1年間を通して運営しています。



身近な題材にこだわる

探究の授業で大切にしていることは、「大袈裟なテーマを設定しない」「身近な題材にこだわる」ことを重視しています私が担当する情報科でも、よく調査研究に取り組んでいますが、以前、ある研修会で「SDGsで立派な発表のできる生徒が、『身近な問題の発見・解決』場面では何も意見を出せない」と話題に出たことがありました。「自分の周りには問題なんてない」と口にする生徒も少なくありません。どのようなテーマに取り組んでいるかは、詳しくは本校のブログをご覧ください。


▲探究で作成し、全国中学高校Webコンテストでは銀賞を受賞した「ラブレター必勝法」のサイト



発想を広げる“悪ノリ”実習

そこで、生徒が「問い」を見つけるための手助けとなるよう、私は授業の最初に「悪ノリ」的な実習をよくやるようにしています。
情報の授業の例ですが、

  • 他人を騙す広告や噂を考えてみる

  • ガチャの排出率を意図的に操作してみる

  • いたずらソフトを作って友達を驚かせてみる

いずれもメディア・リテラシーや情報セキュリティにつながる重要な意味を含んでいますが、探究的な意義としては「そんなこともやっていいんだ」と生徒たちの発想を広げることにあります。「くだらないかもしれないけど、何となく面白そう」から始まり、いつの間にか気になって夜も眠れなくなり、周囲から自分勝手と言われながらも、のめり込み続けてしまう。これが探究の理想像だと個人的には思っています。

 
▲探究で取り組んだ「怪しい広告の作成」
 



「バラバラ」であることが強みに

とはいえ、お題目を掲げもせず、悪ノリっぽい・くだらないことを、なかなか学校全体でやっていくのは困難です。実は本校でも、「教職員一丸となって○○に向かう」ということが、まだほとんどありません。良くも悪くも互いに無干渉です。総合探究科も、おそらく担当者ごとに異なる思想と方針で授業を回しているのだと思います。本当にこれで良いのか、と時折不安になります。

しかし、それで良いんだとも思います。現在の環境は、同調圧力の極めて薄い、個々の「やりたい」を実現しやすい環境だからです。過去には、公立の中学校から外部進学してきた生徒が、「日出に来て初めて自分を出せた」と笑顔で話してくれたこともありました。



“楽しむ大人”の姿が生む学びの連鎖

好き勝手に動き回る教職員の文化は、生徒にも伝わっているようです。私も採用時は数学科でありながら、今は情報科を主とし、公民科の授業に一番注力しています。昨年は南極観測隊にも参加し、下半期に学校を留守にもしてしまいました。

肩の力を抜いて、各々の教師が興味の赴くままに探究する姿を生徒に見せる。そんな教師を見て生徒も少し羽目を外す。その繰り返しの先では、いつの間にかすべての教師と生徒が、探究の理想像を手に入れているのかもしれません。



 

  ※内容はすべて2022年11月当時の情報です。