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2022.11.02

【活用事例】学びを支える「コンパス」の存在が生徒の自律を高める(公文国際学園中等部・高等部)

活用事例 中高一貫教育校 各教育活動の効果検証 カリキュラム・マネジメント 成長の把握 探究学習

齋藤 亮次先生

 

 

学びを支えるコンパス」の存在が生徒の自律を高める

 

全学年で内容を変え取り組む探究プログラム

本校は、教育の三本柱として位置付け「学校」「寮」「公文式」を通して、「自ら学び、考え、判断し、行動する」生徒、ひいては国際社会で活躍する有能な人材を育むことを目指す私立中高一貫校です。その実現に向け、10年以上前から探究的な学びに力を入れており、各学年のプログラムには5日間をフルに活用し探究学習に取り組む「スタディーウィーク」も組み込んでいます。入学したばかりの中学1年生は自分の身近な興味から、その後学年が上がるにしたがって日本から世界へと視野を広げていきながら探究活動を行っています。

探究型学習のひとつの指標として、「Ai GROW」で生徒の資質・能力の成長を定量化するデータを取りました。生徒たちのバックグラウンドや興味も、先生の専門分野もさまざまという中で、生徒の多面的な成長をコンピテンシーに置き換え生徒・先生間で共通言語することでカリキュラム全体のマネジメントが可能になるはずですまた、近年は本校も総合型選抜や学校推薦型選抜で進学する生徒が増えていますが、キャリア教育の一環として、生徒が自身のコンピテンシーとその成長を把握しながら客観的にアピールできるようになるのではないかとも期待しています。

なお、「Ai GROW」で定量化できる25項目のコンピテンシーにきちんと根拠があり、その中から学校の教育目標などに合致したものを選択できるようになっていますが、多くのコンピテンシーの中から必要なコンピテンシーを抽出して計測できる点は、今後コンピテンシーを共通言語として活用していくために重要なポイントだと考えています。また、エクセルを加工することなく管理画面上の簡単操作で受検結果の確認やデータの分析ができ、フィードバックに活用しやすいという点も今後継続して活用していく上で不可欠な要素です。

 

高校1年生の探究プログラム「プロジェクト・スタディーズ」

各学年での取り組みの中から、具体的な事例をご紹介したいと思います。高等部の1年生が行うプログラム「プロジェクト・スタディーズ」は、「好奇心にとことんコミットする」をテーマとしたゼミ形式による個人探究プロジェクトです。「二酸化炭素を出さない家の構造はどのようなものだろうか」や「葉山の海にいる海綿動物は、乳酸菌に対する抗菌作用はあるのか」といった社会課題をテーマにしたものだけでなく、「畳の上でなくテーブルの上で競技かるたをしても、スピード感を残すにはどうしたらよいのか」や「白雪姫のような子が現代にいたらどうなるか」といった生徒の興味・関心をひくようなテーマに取り組むケースもあります。これまでさまざまなブラッシュアップを行いながら毎年実施していますが、今年は株式会社トモノカイと協働して4月から準備に着手し、月に一度、大学生大学院生メンターから探究活動のフィードバックをもらう機会を設けて活動を進めてきました。そして迎えた「スタディウィーク」では、ワークショップやフィールドワークにより探究活動を深め、最後にはゼミ内で発表会を行いました。そして、この一大プロジェクトの効果と生徒の成長を把握するため、プロジェクト開始時発表会後の2回、「Ai GROW」の受検を行いました。

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「好奇心にとことんコミットする」がテーマの探究プロジェクト


中央値や最大値の変化やデータのばらつきなどを確認できる箱ひげ図で「Ai GROW」の受検結果を確認してみたところ、プロジェクト前後でどのコンピテンシーも最小値が上がって各能力の底上げができたことが分かり、中央値も向上したことから、多くの生徒の成長につながったのではないかと考えています。特に「疑う力」に関しては、最小値の大幅な向上を確認でき、生徒の成長とともに探究学習の効果を実感することができました。

 

「Ai GROW」が学びのコンパスに

このように大きな効果が確認できた背景には、生徒たちの取り組みはもちろん、「Ai GROW」がコンパスとしての役目を果たしたことがあったのではないかと考えています。プロジェクト開始時の「Ai GROW」の受検でルーブリックを確認できたことで、生徒たちは求められるコンピテンシー意識した上でプロジェクトに臨みことができ、探究活動の過程においても、自分が「いま何をどこまで達成できているか」点検しながら進むことができました。受検項目に「表現」「論理的思考」があることを確認した上で、ただ「伝えたい」ではなく、「どうやったら伝わるか」を意識してプロジェクトに取り組んでいた生徒もいました。生徒からは他にも、「発表資料作成で何を重視するかと考えたときAi GROW受検項目(計測コンピテンシー)がとても参考になった」「相互評価を通じて友達のことを多面的に見ようとするようになった」「結果を見て前より自信を持てるようになった」というような声が挙がり、「Ai GROW」導入の効果を感じています。

一般的に探究学習は、紋切型に課題を見つけるところからスタートするものと考えられがちですが、課題設定の前に何かにワクワクそして、モヤモヤする気持ちを出発点にしたいと考えています。その後のスキルは後からでも身に付けることができるため、まずはこのようなマインドを大切にすること、先生も答えのない問いに向き合う生徒たちと一緒にワクワクモヤモヤすることが重要ではないでしょうか。「Ai GROW」を評価の軸とすることで実現できた、生徒が自律的にプロジェクトを進め、先生はその生徒の頑張りを全力でサポートするという体制を基盤とし、今後もさらにプログラムに磨きをかけながら探究学習を行い、生徒たちの「自ら学び、考え、判断し、行動する」力を育てていけたらと考えています。

 

リンク:
公文国際学園中等部・高等部
https://kumon.ac.jp/k-gakuen/kokusai/