従来の学力や偏差値にとらわれない探究の評価
長崎県立諫早高等学校
育みたい資質・能力の言語化と細分化
本校は「自立創造(高い志を抱いて自分の人生を自分の力で切り拓く)」を校訓に掲げる100年以上の歴史をもつ伝統校です。「主体性」「協働性」「チャレンジ」を行動目標に大学受験だけにとらわれない学びを実践していますが、一番大切にしているのが「主体性」です。生徒には、大学進学後、そして、社会に出た後も自分で自分の時間をデザインしていける力を身に付けてもらいたいと考えています。この「主体性」を漠然とした概念として各自の理解に委ねるのではなく、言語化・細分化することはできないか、入学から卒業までの成長を数値で具体的に把握しながらその成長を加速させることはできないかと、さまざまなアセスメントを検討してきました。
多様な能力の成長を必要なタイミングで把握
過去には別のアセスメントもいくつか試しましたが、思考力に特化しすぎて生徒の多様な能力の可視化につながらないと感じるものや、コスト的に年に1回受検を行うのが精一杯で細かい変化を見ることができないものなど、どれも決め手に欠けました。また、「主体性」の変化は短期的に見取れるものではなく、生徒一人ひとりを長くモニタリングしていく必要があります。予算に左右されることなく年に何回でも計測でき、本校の考える「主体性」の成長を可視化できるアセスメントを探していたところ「Ai GROW」に巡り合いました。担当者から紹介を受けた時、「これだ!」と思いましたね。
探究による成長実感をもたせるために
本校では「Ai GROW」だけでなく、「数理探究アセスメント」も併せて導入・活用しています。導入以前は探究を通して生徒のどのような能力がどれだけ伸びたのかを把握できず、「総合的な探究の時間」の評価が大きな課題となっていました。「数理探究アセスメント」は、探究の適切な評価を実現できるだけでなく、生徒に探究がさまざまな能力の成長につながっていることを実感させることができます。「求めていたものに出会えた」という言葉がまさにぴったり。記述式問題と選択式問題のバランスも良く、選択式問題に関してもよくある「正しいものを一つ選べ」ではなく、「不適切なものを選べ」「選択肢の重み付けをせよ」という出題形式がとられています。正解が一つしかないことなど少ない今とこれからの社会で特に求められる能力をしっかりと可視化できる良問揃いです。また、「数理探究アセスメント」は12問とほどよい問題数で、生徒は集中力を切らさずじっくりと取り組むことができます。そして、なんといっても私が探究の授業を通して繰り返し生徒に伝えてきた探究を深めるための観点が設問にすべて盛り込まれています。以前から「数理探究アセスメント」のような問題を作り、生徒に取り組んでもらいたいと願ってきましたが、「こうすれば良かったのか」と、目から鱗でした。
▲外部講師を招いたフィールドワークに取り組む生徒たちの様子
生徒の成長を促す偏差値以外の評価軸
本校では近年、「キャリア検討会」という脱偏差値型のキャリア教育の取り組みを実践しており、総合型選抜入試や学校推薦型選抜入試を含めた生徒の多様な進路選択をサポートしています。この「キャリア検討会」では、いわゆる従来の学力以外で生徒を評価する軸を8つ定め、それらにおいて優れた生徒を「キャリアエリート」として選抜・支援しています。
▲従来の学力以外の軸で生徒を評価し「キャリアエリート」を選抜するための8項目
現在は、項目5の「コンピテンシーテスト」において「Ai GROW」および「数理探究アセスメント」のデータを活用しています。これまでも「この生徒は偏差値じゃない何かをもっているな」と感じることはありましたが、アセスメントを活用することで、経験値や肌感覚に客観的なデータを重ね合わせることができます。「Ai GROW」および「数理探究アセスメント」のデータを「キャリアエリート」選抜に活用し始めてからの変化の把握はこれからですが、生徒にどのような成長が見られるのか、今からとても楽しみです。
以前は偏差値の高さを絶対的な価値とする雰囲気がありましたが、今は「偏差値とは異なる視点で尊重されることもまた重要である」という価値観が校内の共通認識になったと感じます。その結果、教員も、生徒のネガティブな部分を指摘するよりは良いところを見つけていこうという姿勢に変わってきています。
今後は、引き続きデータを蓄積しながら、行事前後での計測による教育効果の可視化や、データを基にしたジェンダー別の有効な指導の模索、生徒の成長データの広報活動への展開など、さまざまなデータ分析・活用に取り組んでいきたいです。生徒の成長と本校の教育の推進を後押ししてくれる強力なツールである「Ai GROW」と「数理探究アセスメント」とともに、これからも挑戦を続けていきます。