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【活用事例】学校教育目標と探究とキャリアの有機的な接続

市立札幌藻岩高等学校

【活用事例】学校教育目標と探究とキャリアの有機的な接続

学校教育目標と探究とキャリアの有機的な接続

 

身に付けてほしい資質・能力の策定と探究の再構築

校歌の一節にもある「たけたかく」(生徒が自主的で活発な様子)を目指す生徒像として掲げる本校。その実現に向け「MOIWA 5Bs」と名付けた5つの力をグラデュエーション・ポリシーとし、すべての教育活動を通して生徒がこれらの力を身に付けられることを目指しています。

 

▲グラデュエーション・ポリシー「MOIWA 5Bs」

 

以前も「総合的な学習の時間」の中でさまざまな機会を提供はしていました。しかし、それらが系統立てられていないことが大きな課題になっていました。「MOIWA 5Bs」の策定を受け、これらの力を育むうえで3年間の探究プログラムをどのように設計・再構築すべきか、私の所属する探究委員会にて検討を重ね、改革を段階的に進めてきました。

 

現在の3年間の探究プログラムは概ね以下の通りです。

1年生探究基礎
実体験を通して社会に目を向ける

年生10MSPMoiwa&Minamiku  Smile&Sustainable  Project&Platform
社会の一員として、地域社会の課題解決に向けたアイデアを共創する

2年生(11月~)ミライdesign
持続可能な社会とそれを担う自己の未来を描き、行動する

 

このようなステップを踏みながら必要なスキルを蓄え、自らのキャリアを主体的に考え、行動できるようになることを目指し、3年間の一貫した探究活動に取り組んでいます。実体験を重視し、さまざまな人生観をもつ人に会うなかで社会と自分のキャリアをつなぐプログラムです。

 

 

探究の成果を見取り、成長を促す評価

このような探究を進める中で「MOIWA 5Bs」がどのように成長しているのかを把握したい、また、それらの力と探究のつながりを生徒が具体的に理解できるようになれば、その後の探究活動や成長にも好影響が生まれるのではないかと考えるようになりました。当初は別の外部評価ツールを活用していましたが、25種類のコンピテンシーを簡単に組み合わせて「MOIWA 5Bs」をより直接的に測定できること、自己評価だけではなく他者からの客観的な評価とAIの補正によって、信頼性の高いデータが得られることが決め手となり、2023年度から「Ai GROW」を導入しました。また、コンピテンシーは他者との協働の中でどのように発揮されているかが重要であり、評価をその後の行動変容につなげるためにも他者に映る自分を理解しながらリフレクションする必要があります。相互評価という経験を高校生のうちから積むことの教育効果や、年間何度でも受検でき、最適なタイミングでデータを取得・活用できる点も大きなメリットだと感じました。

 

 

生徒の変容・成長や探究の効果を言語化できる

初回受検を終え、管理画面を通して個々の生徒のデータを実際に見てみると、何となく感じてはいたものの、はっきりと言語化できなかった生徒の強みや課題が可視化されていることに驚きました。また、管理画面では生徒個人の結果だけでなく、クラスや学年の傾向や成長も簡単に確認することができます。生徒指導に加えてさまざまな業務があるなか、エクセルを加工することなくさまざまな分析ができるのは、データを継続的に活用するうえでとても重要なポイントです。

 

探究をより深めていくためにも、スクール・ポリシーに掲げる「MOIWA 5Bs」を単なる目標ではなく、生徒の成長につなげていくためにも、肌感覚に頼らない現状の可視化、教育効果や課題を議論するためにも、共通言語・認識が欠かせません。そのハブとなるツールとしても「Ai GROW」には大きな期待を寄せています。すでに段階的に始めてはいますが、校内研修なども積極的に行いながら、どの教員もデータを参考にしながら生徒指導や議論ができる環境を整えていきたいと考えています。

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▲自己の変容・成長を「MOIWA 5Bs」ベースで多面的に確認できるレポートの一部

 

探究の経験と自身の成長をリンク

探究の成果発表もこれまではどうしても活動報告にとどまりがちでした。しかし、「Ai GROW」のデータと探究の活動をリンクさせることができるようになった今は「どの活動が自身のどの力の成長につながったと考えられるのか」「なぜその力が伸びたのか」「今後どうしていくべきか」と考えることができるようになり、発表に独自性と具体性を加えることができるようになりました。そして、こうした振り返りによって、「MOIWA 5Bs」が学校の掲げるグラデュエーション・ポリシーという存在ではなく、生徒にとって「自身の成長と深く結び付く目標」となることでしょう。今年度、どのような発表が聞けるのか、とても楽しみです。

 

今後は「Ai GROW」の活用の幅を探究の評価にとどめず、学級・学年運営や生徒および保護者との面談など、校内全体に広げていきたいと考えています。また、「Ai GROW」によって得られた共通言語を基盤に、「MOIWA 5Bs」を実現する教育活動の充実を図るとともに、生徒の成長を学校一丸となって応援していきたいです。