キャリア形成に欠かせない自己分析力を高め、生徒理解も促進
本校は、前身である福井県立敦賀商業学校の開設から117年目を迎える公立高校です。「自主自律」の校訓の下、「人間の尊重」「真理の探究」「個性の伸長」を教育目標に、生徒一人ひとりがやりたいことの「種」を探し、育て、花咲かせられるよう、生徒の好奇心と学びを全力でサポートすることを大切にしています。
「自主自律」の実現に向け、本校では今年度(2023年度)から全教科で定期考査を廃止しました。生徒に定期考査のための勉強を強いるのではなく、生徒自身で目標や計画を主体的に立てて取り組む力を伸ばしたい、教員はそれを全力でサポートする存在でありたいと考えたうえでの改革です。普段の頑張りを見取り、自ら学び続ける力を育成するため、評価は、単元テストと各教科の課題、授業への取り組みなどを総合的に判断して行っていきます。また、年2回、思考力を問うものも含めた初見の問題に取り組む総合テストを導入しました。
改革初年度でもあり、定期考査のある学生生活に慣れている生徒たちには戸惑いもあるようですが、まず重要なのは、定期考査がなぜ廃止されたのか、その理由を生徒たちがしっかりと理解することだと考えています。目的の周知と、年間計画のブラッシュアップを重ね、これからも生徒の「自主自律」の力を高めるため取り組みを進めていきたいと考えています。
このような改革の中、生徒の多面的な成長の把握と非認知能力をはじめとする能力の可視化は、学校として重視していきたい事柄の一つでした。成長のためには、現状を把握し、伸ばしたい能力を意識しながら学びに取り組むことが不可欠です。そこで、改革前年度となる2022年度に試験的に導入し、改革初年度となる今年度から1・2年生全体で導入したのが「Ai GROW」です。本格運用は今年度からということもあり、現在は受検結果の振り返り、模擬試験の結果との相関分析、学校が定める育みたい資質・能力を定量的に把握ができる「学校コンピテンシー」機能を活用した教育目標の定量化など、さまざまな方法を試しながらより良い活用方法を模索している最中です。模擬試験との相関分析では、「耐性」と「自己効力」に模試結果との相関があることが分かりました。定期考査を廃止しても学力保証を求める声が多く、この分析はさらに進めていきたいと考えています。
▲教育目標に掲げる3つの力を「学校コンピテンシー」※機能を活用して可視化
※「Ai GROW」で計測できる25のコンピテンシーの中から複数のコンピテンシーを組み合わせることで、
スクール・ポリシーに掲げる資質・能力とその成長をエクセルなどを加工することなく管理画面上で確認できる機能
また、今後は「Ai GROW」を面談やキャリア教育でも活用していきたいと考えています。本校では、担任に限らずどの教員とも面談ができるようになっており、そのための面談週間を設けています。担任以外の教員でもその生徒をより深く理解したうえで面談を進めるための資料として考えているのが「マイキャリアストーリー」です。進路や社会での活躍という観点で自分なりの目標を設定し、自身の現状を分析しながら目標達成の手段や計画を考えさせる内容にしています。
▲マイキャリアストーリーの内容案
こうしたキャリア教育の際にどうしても大きな課題となるのが、生徒の自己分析力。しかし、この課題も「Ai GROW」なら解決できるはずです。「Ai GROW」で自らの強みや成長を客観的に把握し、それらを探究活動や部活動、学校内外での経験と紐付けて振り返ることで、生徒は他者に対して自分の強みや課題を具体的なエピソードや数値とともに語ることができるようになります。そこから導き出した手段や計画を記した「マイキャリアストーリー」を基に面談を行うことで、教員はより深い理解の下、具体的なアドバイスができるようになります。定期考査廃止のもう一つの目的に、一部の単元テストをCBT化することで教員の手を空け、生徒との面談時間を増やしたいという思いもありました。「Ai GROW」を含めたテクノロジーの力を借りて、生徒たちとのコミュニケーションの頻度と質をさらに高めていきたいと考えています。
本校は、近年拡大する学校推薦型選抜や総合型選抜入試でも多くの合格者を輩出しています。これまでは教員が指導しながら短期間で準備を進めていくようなケースもありましたが、本来、このような入試は探究なども含めた高校生活の学びの延長線上にあるもの。本校が定期考査廃止によって目指す、生徒が自らの学びと強みを振り返りながら自走し、教員はそれをサポートしていくという本来あるべき形に近づけていくためにも、「Ai GROW」には大きな期待を寄せています。
リンク:
福井県立敦賀高等学校
https://www.tonkou.ed.jp/