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【活用事例】】探究とその客観的評価が多様な学力の成長を促進

東京家政学院中学校・高等学校

【活用事例】探究とその客観的評価が多様な学力の成長を促進

探究とその客観的評価が多様な学力の成長を促進

 

東京都千代田区にある本校は、今年で創立100年周年を迎えた歴史ある私立中高一貫校です。創立者である大江スミが掲げた建学の精神、「KVA(Knowledge知識、Virtue徳性、Art技術)」を受け継ぎ、社会に貢献できる自立した女性の育成を目指しています。

 

大学進学実績向上を目標としていた時期もありましたが、レッド・オーシャンであることや、知識詰め込み型の授業を受ける生徒たちの様子などから、のままで本当に良いのかという思いっていました。「生きる力」の重視など学力観も変わるなか、原点である「KVA」に、K(知識の啓発)だけではない、V(徳性の涵養)とA(技術の錬磨)も含めた「KVA精神」に今一度立ち返るべきなのではないかと考えるようになりました。このときに出会ったのが、「マルチプル・インテリジェンス理論」。心理学者のハワード・ガードナー教授により1983年に提唱された、人の知能は知識だけで測ることができるものではない複合的なもので、常に変容・発達可能であるとする考え方です。これに大きな感銘を受け、この考え方を軸に「生徒一人ひとりがもつ、偏差値だけで測ることができない多様な学力を伸ばすために」という視点で教育プログラムを再構築していきました。

 

しかし、この取り組みを意味のあるものにしていくためには、指導と評価の一体化が不可欠です。各種プログラムを実施してもその効果が明確に分からないのでは、効果検証も、さらなる目標設定もあいまいなものになってしまいます。このような多様な能力を評価できる仕組みがないかと探していたときに、「Ai GROW」のことを知りました。自己評価だけではなく相互評価があり、本人も認識できていない強みを客観的に可視化できる唯一無二のツールと知り、探していたパズルの最後のピースがカチッとはまったように感じました。もちろん、校内での説明や承認は必要でしたが、私のなかでは「Ai GROW」の導入はほぼ即決でした。

 

中学から導入を進め、今年度からは高校も含めた全校で「Ai GROW」を活用しています。受検結果を見ると、生徒の自己評価と、その生徒に対するわれわれ教員の実感値はとても近い傾向にあります。逆に、相互評価では意外な能力が評価されていることもあり友人同士のやり取りのなかで発揮されている一面も把握できるツールとして高い信頼を置いています。

 

中学で「Ai GROW」を3年間活用した生徒たちの「Ai GROW」の結果を経年で比較すると、1年生から2年生の間のコンピテンシーの伸びがとても大きいこと、3年生ではスコアが少し下降し、個人間の差が大きくなっていることが分かります。本校では中学12年生総合学習でSDGsの「住み続けられるまちづくりを」「働きがいも経済成長も」をテーマに地域働く大人を取材し、働きがいや地域への思いを表現したポスターを制作する活動に取り組みます。2年生をリーダーとした縦割りチームで活動を行うため、2年生は大きなプレッシャーを受けますが、その分、さまざまな能力を発揮する機会、普段なかなか接することのない大人たちから評価され機会も多くあります。これらの経験が、主体性や協働性などをはじめとするコンピテンシーの成長につながっているのではないかと考えています。一方、3年生のプログラムは1・2年生と比べるとより長期間にわたるもの成果の言語化などに重点を置くため、1・2年生のときのような交流の機会が制限され、結果、コンピテンシーの成長が鈍ったようですこうした「Ai GROW」の受検結果から得られた仮説を基に、プログラムの期間や内容の改善を検討していきたいと思っています。

 

▲該当学年の3年間の「Ai GROW」測定結果比較
(1年生から2年生の間で各項目の箱ひげ図の最小値や中央値が上昇。
コンピテンシーの大きな成長を確認することができる)

 

マルチプル・インテリジェンスを軸にSDGsの観点から地域・企業の課題の解決に取り組む3年間の本校の探究学習は、2023年7月に第13回 ESD賞(NPO法人「日本持続発展教育推進フォーラム」主催)で最高賞の文部科学大臣賞を受賞しました。その実践報告にも、生徒のさまざまな能力の成長を定量的に示す「Ai GROW」の受検結果を載せています。このように教育効果を対外的に示していくうえでも、客観的な指標である「Ai GROW」の存在は不可欠です。

 

面談で「Ai GROW」の受検結果を生徒と一緒に確認しながらフィードバックをしていますが、生徒は一様にとても嬉しそうです。他者の評価がとても気になるこの年代に、自分の強みを友人が評価してくれていることを知るは、それだけでとても大きな意味があります。また、保護者との面談でも「Ai GROW」を活用。保護者と生徒の橋渡しの役割を果たすことも教員の重要な役割の一つですが、「Ai GROW」によって学校で友達とどのように過ごし、そのなかでどんな能力や強みを発揮できているのか、また、それが周囲からどのように認められているのかを具体的に伝えることができるようになりました。

 

中学では「Ai GROW」を3年間活用してきましたが、データの蓄積を続けながら学年間比較なども行い 、中高6年間で生徒の資質・能力がどのように変化していくのかを定量的に把握し、生徒のさらなる学びと成長つなげていけたらと考えています。



 

リンク:
東京家政学院中学校・高等学校
https://www.kasei-gakuin.ed.jp/