【探究への道 第56回】池亀元喜先生(新潟県立高田農業高等学校)

新潟県農業教育発祥の地での「イネ」を基軸にした探究活動

池亀元喜先生
「農業」を通した学び、社会貢献を目指して
本校は、1899年開校の新潟県農業教育の発祥校です。令和7年度までに17,000名が本校を卒業し、令和8年度は全校生徒481名で学びが始まりました。
私は、現在「生物資源科農業生産コース」に所属し、「イネ」を中心に授業や探究活動に取り組んでいます。生徒には、教科「農業」を通して、植物の生理・生態や産業としての「農業」という生業の魅力、社会貢献への意識などを育みたいと考えています。
「私たちにできること」を起点に。販路拡大とザンビアへの食料支援
本校は、生産しているすべての玄米で、「食品安全」、「労働安全」、「環境保全」などに配慮したGLOBALG.A.P.認証という国際認証を取得しています。そして、令和6年からの「令和の米騒動」の中で「私たちに何ができるか」、「何をしなければならないのか」を考え、国際認証を生かした販路拡大活動などの流通面にも力を入れ、令和7年産高田農業米(約10t)はほぼすべて、本校が独自で開拓した販路に販売しました。令和5年度からは、私が前任校で始めたアフリカ「ザンビア共和国」への食料支援活動にも取り組んでいます。
コメの販路拡大活動、ザンビアへの食料支援活動の両方において、生徒の「私たちにできること」、「しなければならないこと」を吸い上げ、活動を始めるきっかけとしています。
▲令和7年度の稲刈りの様子
国際認証を生かした販路、また、生徒のグローバルな視点を養いたいと考え、令和5年度より、高田農業産「コシヒカリBL」をシンガポールに輸出。生徒はシンガポールや海外への関心が高まっているように感じます。また、令和7年度からは、学校が所在する上越市のふるさと納税の返礼品として採用され、4.5tの「こしいぶき」を上越市に提供しました。ふるさと納税の返礼品プロジェクトでは、「地元である上越市に対して貢献できたことはうれしい」などの声が生徒からあがっています。そして、文部科学省「マイスター・ハイスクール普及促進事業」において「次世代の水産業・農業を担うプロフェッショナルの育成」という目標の下、新潟県立海洋高等学校と株式会社ホテルハイマートと連携し、駅弁を商品化しました。本校として「コシヒカリBL」を1t提供し、駅弁の包装紙のデザインも担当しました。
▲生徒が栽培した「コシヒカリBL」は、60年あまりの伝統をもつ富寿しグループのシンガポールの2店舗で提供されている。来店者にはQRコードでアンケートも実施

▲大阪・関西の万博では万博内の飲食店(株式会社神戸ゴマルゴ)にお米を提供(写真左)。新潟県立海洋高等学校と株式会社ホテルハイマートと連携し、駅弁を商品化。生徒が原案を作成した包装紙(写真右)
コメの販路拡大活動とは別に、令和2年度より科目「課題研究」の一環で、アフリカのザンビア共和国の子どもたちへ食料支援活動をしています。私がザンビアへの研修に参加したことがきっかけで、科目「農業と環境」の授業中にザンビアのストリートキッズの写真を見せました。そして「この子どもたちのために、『農業』を学ぶ私たちに何ができるか」を考える授業を実施し、「自分たちで栽培した農産物を贈りたい」という意見が出て、食料支援に向けた活動が始まりました。寄贈している農産物は、アフリカの飢餓問題の解決のために開発された「ネリカ米」という陸稲です。令和2年産からの寄贈で延べ17.3kgのネリカ米をザンビアの子どもたちに寄贈しました。この取り組みが、「新潟SDGsアワード2022」にて「大賞」と「食の新潟国際賞財団特別賞」を受賞し、情報発信され、文部科学省検定済教科書『Here We Go! ENGLISH COURSE 3』(光村図書出版株式会社)に1つの題材として掲載されています(令和7年度~9年度使用予定)。


▲ザンビアの孤児院での「ネリカ米」の食事会の様子(写真上)。栽培中の写真や生徒が英語で書いた手紙、栽培マニュアルも送付した(写真下)。
「探究」と「追究」-活動を通して生まれる生徒の意識変容
今後は、教材を使用している中学生に、題材を学んでの変容や価値観の変化などをインタビューしたいという声が生徒からあがっています。このように主体的な声があがる背景には、活動を通した大きな意識変化があります。それぞれの探究活動が始まる際には、一部の生徒から「本当にそんなことができるんですか?」と疑問の声もありました。しかし、それぞれの活動が達成され、生徒は「海外に興味をもった」、「『農業』を学ぶ自分たちにできることを考えていきたい」など、明確な意識や意欲の変化がみられます。
探究活動を設計・実行するに当たって生徒には、「『探究』と同時に『追究』しよう」と声を掛け、取り組んでいます。「それぞれの活動を最後までやり切る意識」が育まれるように伴走することを意識しています。
新潟県立高田農業高等学校
https://takadan-h.nein.ed.jp/
生物資源科
https://takadan-h.nein.ed.jp/2gakka/seibutusigen.html
※内容はすべて2026年4月当時の情報です。