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【探究への道 第30回】高橋裕樹先生(横浜国立大学教育学部附属鎌倉中学校)

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 「自己実現」と「共生」を育む探究学習の実践 

 
この記事から分かること

  • 「自己実現」「共生」を育むための探究学習の取り組み
  • 国語科の実践例を通じた主体的な学びの工夫と成果の紹介
  • 授業における教員の役割と工夫


小中の垣根を超えた教育研究の実践

1947年に新制中学校として開校し、幾多の変遷を経て現在は横浜国立大学教育学部附属鎌倉中学校として教育に励んでいる本校。週に一度の研究日を軸として教職員一丸となって授業研究に取り組み、秋の研究発表大会においてその成果を発表することで教育界における研究推進の役割を果たしています。

同じ敷地内にある横浜国立大学附属鎌倉小学校とともに「自立に向けてたくましく生きる」という学校教育目標を掲げ、小中の垣根を越えた教育研究を進めていることが、本校の教育の特色です。研究を進めるにあたり、児童・生徒の義務教育課程において「自己実現」と「共生」を育むことが学校教育目標の達成につながるという共通認識をもち、それを命題としてチーム一丸となり取り組みを進めています。



「自己実現」と「共生」を育む探究学習 

「自己実現」の育成にあたっては「子どもは生まれながらにして有能な学び手である」という子ども観を前提に指導。「〇〇したい」「△△になりたい」という児童・生徒自らの思いや願いを原動力に、授業や生活で培ってきた解決のすべを生かし、目的のために粘り強く取り組む姿を重視しています。これらは探究においても同様で、実現したときの喜びや成就感がさらなる思いにつながり、探究のサイクルが自発的に生まれることを期待しています。

しかし、それぞれが実現したい事柄を尊重することは大切ですが、それが公共の精神や他者の権利を侵害するものであってはなりません。そこで、児童・生徒に学びの中で投げ掛けるのが「共生」の意識です。他者との違いを理解し受け入れ、みんなでより良い集団や社会の在り方を目指し模索できる意識を育んでいます。

「自己実現」「共生」の2軸はコンピテンシー・ベースの学びの中で育まれるものであり、本校では探究学習をその根幹として位置づけています。



国語科における探究学習の実践例  

1学年の国語科では、「読みを深める」というテーマを掲げました。「書かれているところから書かれていないところを読む」ことを重視し、文中の言葉を手掛かりに言葉に表現されていない登場人物の思いや事柄や事象の裏に隠れた背景を読み解く学習活動が行われました。

例えば、ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」の学習では、客が暗い過去を話そうとする際、辺りが闇一面に覆われるなど、心情と小説世界の風景が重なることを確認しました。しかし、それだけではなく、「なぜランプの上においたかさが緑色なのか」「かさをランプに置いた時の明かりの消え方はどうだったのか」「蝶を光り輝かせたランプの灯を消すことに意味があったのでは」など、自ら問いを設定し、仮説を立て、文中の言葉を根拠に妥当性かつ客観性のある解答を築こうとする生徒たちの主体的な姿が見られました。

さらに、「自分の読みを他者に認めてもらいたい」という想いを抱き、どのように説明したら理解してもらえるか、どんな根拠を用意し、論理を組み立てれば納得を得られるかなど、相手に対する意識を高くもちながら学ぶ姿が印象的でした。



授業における教員の役割   
 

昨今、「教員のいらない授業」という言葉を多々耳にします。それは「有能な学び手である子どもたちが主体的に課題を見出し、培った力や経験を活用しながらその意義や本質を探り見究めていく、その過程において多くの学びを獲得していく授業」と解釈しています。もちろん、無責任に放り投げるのではなく、指導者の意図や仕掛け、ゴールを見据えた入念な準備があってこそのものです。そこに、AIでは辿り着けない、私たち教員だからこその真価が問われているのだと思います。

有能な学び手に存分に力を発揮してもらえるよう、試行錯誤しながら授業づくりをする毎日です。もしお時間がございましたら、ぜひ、本校の研究発表会にもお越しいただき、ご意見やご助言を頂戴できれば幸いです。先生方にお目にかかれる日を楽しみにしております。

 横浜国立大学教育学部附属鎌倉中学校 教育研究について:
https://fuzokukamakura.ynu.ac.jp/research