Well-beingにつながる探究活動の評価
高崎健康福祉大学高崎高等学校
Well-beingの実現に向かう学習者を育むために
「感謝・奉仕・友愛」の校訓の下、主体性やコミュニケーション能力、やり切る力などといった非認知能力の育成を目指している本校。VUCA時代に必要な力が以前とは大きく異なってきた状況を受け、令和4年度の入学生からは探究活動を教育の一つの柱として「自他ともにWell-beingの実現に向かう学習者となる」ことを大きな目標に掲げ、取り組みを進めています。
探究活動の総括的評価と形成的評価を支えるツール
探究活動で育みたいと考えているのが、OECDがEducation2030プロジェクトで創り上げたラーニング・コンパスの中心に据えられているWell-beingを目指すための「コンピテンシー」。しかし、生徒に正解のない、新しい取り組みに不安なく取り組んでもらうためには、その取り組みによる成長を実感できる評価が不可欠です。可視化しづらいコンピテンシーを負担なく客観的に評価し、生徒の成長の加速やプログラムの改善につなげるための方法を探す中で出会ったのが「Ai GROW」でした。
いくつかの評価ツールと比較検討しましたが、年間に何度でも受検でき、教育活動の前後での変化を具体的に把握できることや、すぐに受検結果の振り返りができる即時性のあるフィードバックなどが「Ai GROW」導入の決め手となりました。相互評価は客観的なデータをもたらしてくれるだけでなく、普段あまり関わらないクラスメートを知ろうとすることが、人間関係を築くきっかけにもなっていると感じています。
コースごとに異なる探究活動の特長が明らかに
現在は探究プログラムの実施前後で「Ai GROW」を受検し、探究活動による生徒のコンピテンシーの変化を観測しています。本校では、コースごとに異なるテーマの探究活動を行っており、現在、3つのプログラムを展開しています。スポーツを通じた地域貢献やセカンドキャリアを探究するプログラムでは、「決断力」や「課題設定力」の成長が見られます。寄付やボランティア活動を通じて、個人が社会に与える影響を探究するプログラムでは、「自己効力」や「共感・傾聴力」が向上しました。社会をより良くするためのアントレプレナーシップを探究するプログラムでは、「創造性」「柔軟性」「自己効力」といったコンピテンシーが顕著に伸長しています。また、すべてのプログラムに共通して「影響力の行使」と「表現力」が上昇していることが確認されました。
▲2024年度高校3年生特進コースの、1年次と3年次のコンピテンシーの変化
「Ai GROW」によってプログラムごとに育成を目指したコンピテンシーが伸びていることを数値で確認することができるようになり、「やってきたことは間違いではなかった」と教員の自信にもつながりました。また、意外なコンピテンシーの成長や伸び悩みがあればその理由を考えプログラムを強化・改善することができるのも、プログラムの効果を客観的に数値で確認できる利点だと思います。
探究活動の過程を評価して次につなげる
成績表では確認できない自分のさまざまな能力の成長を把握できることは、生徒にとって大きな励みになっています。正解がなく、ペーパー・テストでの評価もできない探究活動では、外部コンテストの受賞実績などが注目されがちですが、賞を獲得できる生徒はほんの一握りです。賞を取れなかった多くの生徒、また、コンテストにエントリーしなかった生徒に探究活動の成果がなかったのかといえば、決してそうではありません。
探究活動の過程の中で試行錯誤しながらコンピテンシーを伸ばすことができた、これこそが重要であると思います。また、探究活動などを通してどのようなコンピテンシーが伸びたのかを生徒に伝え、生徒自身でその理由を考え、次の成長につなげられるようにする。私たちはそれが探究活動の評価においてとても大切なことだと考えています。それを可能にする「Ai GROW」は、本校の探究活動になくてはならないツールです。
キャリア教育や保護者との対話で見えた変化
「Ai GROW」のデータは、志望する生徒が年々増えている総合型選抜入試や学校推薦型入試における志望理由書の作成にも活用しています。他者に評価してもらった強みには説得力があり、生徒は「Ai GROW」によって客観的に把握できた自己の強みを、自信をもって書類や面接でアピールすることができるようになったと感じています。
また、保護者との面談でも「Ai GROW」の受検結果を個人レポートを介して保護者と共有しています。保護者の多くはレポートを見ると生徒の幼い頃のエピソードを語ってくれます。教員は学校にいる生徒の姿しか見られませんが、保護者から家庭での様子を聞くことで、コンピテンシーの成長につながった背景をより具体的に把握することができます。今後もこのような時間をなるべく多くもっていきたいと考えています。
コンピテンシーは卒業する生徒への最大の贈り物
先の見えないこれからの時代に羽ばたく生徒にとって、コンピテンシーは社会で生き抜くために欠かせない力。悩んだりつまずいたりすることもあるでしょう。そうしたときも課題に果敢に立ち向かい、他者と力を合わせて解決していくために必要なコンピテンシーは、われわれ教員が卒業生にもたせてあげられる最大の財産の一つなのではないかと考えています。だからこそ、この成長に大きく寄与する探究活動は非常に重要です。これからも「Ai GROW」を活用し、コンピテンシーを羅針盤に一人ひとりの生徒とその将来に寄り添いながら、教員としても学校としても大きく成長していきたいです。