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【活用事例】自由な環境が育んだ「創造力」が「探究力測定」で明らかに(東明館中学校・高等学校)

東明館中学校・高等学校

【活用事例】自由な環境が育んだ「創造力」が「探究力測定」で明らかに

自由な環境が育んだ「創造」が「探究力測定」で明らかに

 

本校は佐賀県にある私立の中高一貫校です。大きな変化の中を生きていく生徒たちには「多様な他者と協働して正解のない課題に立ち向かう力」が求められるようになるという考えの下、PBL(課題解決型学習)を中心に据え、外部との連携を組み込んだ「探究コース」を2020年4月に開設しました。

本コースで3年間学んだ1期生たち。2023年2月に受検した「探究力測定」は、これまでの学びと成長を確認する良い機会となりました。結果を確認してみると、「探究力測定」で確認できる「課題設定力」「実験計画力」「考察力」「創造力」いずれの評価も比較的高い結果に。特に高い結果となったのが「創造力」でした。たとえ探究型学習に力を入れていても「創造力」を伸ばすのに苦慮している学校が多いことや、各能力の評価が他校よりも高い結果であったことをうかがい、これまでの取り組みの成果が表れたのではないかと、非常に嬉しく思っています。



この探究コースは、一斉教育の知識再生型であるSociety 3.0ベースの教育に限界を感じ、主体的・対話的な学びを重視するSociety 4.0ベースの教育を目指そうというところからスタートしました。未来を生き抜く力を育むには、教育のアップデートが不可欠です。何らかの課題の解決に取り組む、その一連のプロジェクトの流れに、すべての科目を当てはめる形でカリキュラムをデザイン。2022年には、個別最適化された学びのSociety 5.0ベースの教育に近い形が実現できたのではと感じています。未知なる領域に、好奇心を持って、仲間と一緒に取り組むことを大切にしながら、生徒たちと共に学びの形を更新させてきました。

1年生ではプロジェクトを進める上で必要になるデザイン思考などの考え方などを学ぶ一方、多くの自治体が抱える町おこしの課題について地元の基山町を題材に政策提言を行い、地域と日本全体について考えるプロジェクト、今後ますます多くの人が当事者となる「がん」を取り巻く現状と「患者となっても理解され生きやすい社会」を探究することで社会貢献の視点を養うプロジェクトなど、さまざまなプロジェクトを進行します。1年生の終わりには、1年間の学びの成果をアウトプットするため、フィールドワークに出かけます。もちろん、この計画自体も生徒たち自身が旅行会社と連携して進めます。2年生ではビジネスプランを立案。実践的グローバル人財の育成を目指し途上国の課題に取り組むテラ・ルネッサンスとの協働プロジェクトを行います。2年生の2学期以降はカリキュラム作りも生徒自身が行うようになり、3年生では、探究コースの最上位目標である「やりたいことを形にすることができるようになる」の実現に向け、一人ずつ自分のカリキュラムを完遂します。外部との連携も随所に組み込んでおり、特に起業家の方々には本当に多くのことを教えていただきました。

これらの活動に取り組む中で、大切にしていたのが環境作りです。生徒たちが「否定されない」「自分のやりたいことができる」「自由に自己決定ができる」と感じられる環境を用意するということをもっとも重視しました。偏差値重視の教育とは決別し、定期考査もなく、模試を受けさせることもありませんでした。不安のない環境の中で、自ら考え、受け入れ合い、自ら決定することで、創造に不可欠なコンピテンシーを伸ばすことができたのかなと考えています。

社会科の教員として、歴史にも多く触れてきた私が思うのは、日本人のDNAの中には、元々、高い創造力が組み込まれているのではないか、ということです。漢字を取り入れ、それを基にひらがなやカタカナを生み出したこともそうですし、浮世絵のような文化や、世界に誇るモノづくりもあります。その発展を妨げたのは、明治以降の近代教育かもしれません。新コース開設には大きな改革が必要かもしれませんが、否定されることなく、自分で考え決定する。その環境を作ることだけでも大きな変化が起きるのではないでしょうか。

自由な環境で伸び伸びと学ぶ生徒たちですが、もう一つ重要なのがマインドセットです。このコースでは学力ではない軸で評価を行うこと、それが未来社会を創造する人材を育むためには重要であるということを伝え、「何のためにこのコースに来たのか」ということを繰り返し考えさせるようにしています。耳にタコができた生徒たちにとってはそれがもう当たり前。一生懸命プロジェクトに取り組んでいるうちに、何かを生み出すことがだんだん楽しくなり、探究コースに来て良かった、と思ってくれているようです。

さらに、探究コースに集まった生徒たちには、それぞれ得意分野がありました。アイデア出しが得意な生徒、それを広げるのが得意な生徒、計画を立てるのが得意な生徒。それぞれが力を合わせ、お互いの強みから学ぶことで、彼らの成長は掛け算になっていったのではないかと感じます。創造力は、一人では伸ばせない能力なのかもしれません。

「探究力測定」受検後、生徒たちは口々に、「とても楽しかった」と言っていました。私も生徒と一緒に受検させていただきましたが、問いのレベルが非常に高いと感じました。「自分ならどうするか」と考えさせるような設問や、動画を見て評価をする設問、投資家の視点で考える設問など、これまで探究コースで扱ってきたような問いからまったく考えたことがなかったような問いまで、さまざまな問題があり、勉強にもなりました。また、自由な回答がしやすい問いになっているため、問題を解くことによって新しい視点に気付けるようになっているのも良い点です。レポートを返却するときにはレベル別の解答例を冊子にしたものを一緒に返却したのですが、生徒たちには「こういうことが求められているんだ」という新たな発見があったようです。それを知ることで、今後の取り組みでは今までの一歩先を目指すことができます。自分のレベルを知るだけで終わるのではないところも、とても良かったです。

最初のプロジェクトは探究コースの行く末が不安になるような結果でしたが、3年間貪欲に学び続けた生徒たちの成長は目覚ましく、最後は私も、生徒たちが自ら推し進めるプロジェクトを感嘆しながら見守るだけの存在となっていました。「創造力」が高かったことも、今の彼らの姿を見れば納得の結果です。進路はさまざまですが、そこでさらに学びを深め、「創造力」を含めた能力をさらに伸ばし、世の中を変える人になっていってほしいと願っています。

リンク:
東明館中学校・高等学校
http://www.tomeikan.ed.jp/