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【活用事例】相互評価による探究活動のエビデンスが与えてくれた、より良い教育活動への道しるべ(岡山大学教育学部附属中学校)

岡山大学教育学部附属中学校

【活用事例】相互評価による探究活動のエビデンスが与えてくれた、より良い教育活動への道しるべ

エビデンスに基づく探究活動の効果検証に向けて「Ai GROW」を導入した岡山大学教育学部附属中学校。「Ai GROW」の受検から見えた成果と、教育活動を加速させる相互評価の重要性について、同校の竹島潤先生にお話を伺いました。


教育研究の推進に必要なエビデンスの獲得に向けて

 

本校は、「自主自律 豊かな心で たくましく」を学校教育目標(「目指す生徒像」)としていますが、これからの時代を生きる生徒たちの「自主自律」の育成に大きく関わる要素は、学力やスキルに加えて非認知能力であると考えています。

これまで本校は大学の附属校として、中等普通教育・教員養成・教育研究の三つのミッションに取り組んでおり、特に教科指導の研究や実践の蓄積は優れたものがあります。それを生かしながら、総合的な学習や教科を横断した学習などを通して、生徒が自らの成長や変化を期待しながら学びに向き合う姿勢をサポートしたいと考えています。

また、SDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指す岡山大学との連携協働を図りながら、本校の共通研究主題「学びの意義を理解し自ら学び続ける生徒を育成するカリキュラム・マネジメント」の達成に努め、非認知能力の分野についても研究を進めようとしています。学校全体の教育研究を推進しながら教育活動の充実を図るには、エビデンスの取得とともに評価の指標として参考となる「Ai GROW」の導入が有効だと思いました。これが「Ai GROW」を導入した一つ目の理由です。

そして、「Ai GROW」で私が最も高く評価しているのが、「他者評価」と「AIによる補正」が取り入れられている点です。学校独自に教員の力だけでこのような客観的なアセスメントを開発することは時間的にも能力的にも容易ではないでしょう。利活用できる外部評価指標を積極的に用いよう、これが「Ai GROW」導入の二つ目の理由です。

 

非認知能力の育成を止めてはならない

2020年度はCOVID-19による突然の休校の中で、生徒同士のコミュニケーションが著しく減少し、生徒同士による相互評価やメタ認知を向上させる機会を失ってしまうことが危惧されました。

だからこそ、非認知能力を育成する機会である「総合的な学習の時間(探究)」や教科の授業における探究的な(課題解決的な)活動を止めてはならないと思いましたし、相互評価という生徒たちに自身を客観的に捉える機会をもたらす「Ai GROW」はすぐに実施すべきだと思いました。

本校の総合的な学習の時間(探究)のプログラムについては、2018年度からその教育内容を再構築しました。研究部と総合的な学習の時間を担当する先生方が中心となって、3年間を見通した大枠の計画を立て、その中で生徒が主体的な学習活動を通して段階的に育成目標を達成できるようにしています。

岡山大学附属活用事例IMG4(差し替え)

▲同校の探究活動の年間計画。育成すべきコンピテンシーが明確化されている他、
評価については生徒間の相互評価が重視されている。

探究活動と「Ai GROW」で獲得したコンピテンシーのデータの結び付きはとても強く、教員の安心材料にもなっています。1年生のインプット重点期、2年生のインプットからアウトプットへの移行期では、世界や社会の課題に触れる取り組みを進めながら、「Ai GROW」の相互評価と「Ai GROW」の受検結果を振り返るための「振り返りシート」を活用した客観的な自己理解を並行して行うことで、自己と社会のつながりを見つけていきます。

岡山大学附属活用事例IMG2

▲同校では「Ai GROW」の受検結果を「見て終わり」にさせないよう、
「振り返りシート」に受検結果をまとめさせ、「Ai GROW」の個人レポートと一緒にファイリングさせている。

3年生では、アウトプットからアウトカムを目指す活動が「Ai GROW」の受検結果に反映された結果となりました。「Ai GROW」の受検は1回目が2020年7月、2回目が202010月の実施でした。この間、個人テーマ探究活動の一環で、アンケート実施(質問紙、Googleフォームやメールなどの活用)、インタビュー(現場取材、電話・メール取材)、現地調査、実験・制作などに取り組み、学校内外の人に気付きや成果を発表・共有したり提案したりする、探究のコアとなる活動があったのです。

この活動で、「影響力の行使」「表現力」「課題設定」の三つのコンピテンシーが初回の受検時から伸びると予想(期待)していたのですが、上記三つのコンピテンシーに「地球市民」を加えた四つの項目で、大きな成長が確認できました。担当や学年団を越え、教職員全員で手応えを感じることができました。

岡山大学附属活用事例IMG1

▲各コンピテンシーの成長を箱ひげ図で示したもの(「Ai GROW」の管理画面から抜粋)。赤色の箱ひげ図は2020年7月の受検結果、緑色の箱ひげ図は2020年10月の受検結果。各コンピテンシーともに中央値と最大値が向上していることが分かる。

 

相互評価から得られる「気付き」の重要性に、保護者から期待の声が

Ai GROW」導入以前は、「自分の子がお友達のことを評価することなんてできるだろうか?」「生徒が生徒を評価することでトラブルにならないだろうか?」などといった相互評価に対する保護者や教員からの不安も一部ありました。そこで、教員会議や保護者向けの案内文書で丁寧に説明を重ねながら、共通理解ができるよう努めました。

本校では、「振り返りシート」に保護者からコメントをもらう欄を設けているのですが、「Ai GROW」実施後の保護者の方々からのコメントには、きわめて肯定的な意見がたくさんありました。生徒にとって、保護者や学校の先生に加え、気質診断とAI補正に基づくクラスメイトや友達から評価を得ることは、自分のことを客観視する機会としてメタ認知の力を向上させる上でとても大きな意味があります。これは、自ら学び続ける力(自己調整学習に取り組む力)につながりますし、保護者が子どもを多面的に見て支援する機会になるもなるのではないでしょうか。

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「振り返りシート」に書かれた保護者のコメントの抜粋。
保護者も相互評価の教育効果の高さを実感されていることが分かる。

 

「Ai GROW」で得られたデータで教育活動のさらなる改善を目指す

非常に多忙な教育現場で、「Ai GROW」で得られたデータを細かく見て個々の生徒への指導助言や学級経営に積極的に還元できている教員はまだ少ないですが、学年主任や研究推進委員の先生方からは「今取り組んでいる教育活動のアプローチは間違っていなかったという安心感を得られました」との声が聞かれています。これからの教育活動とコンピテンシーの成長の関わりについても、「仮説-検証」を繰り返していく手法を得られたと考えています。これは、各教科の取り組みと「総合的な学習の時間(探究)」を含む本校の教育活動全体の改善につながると確信しています。

Ai GROW」を導入してから、担任や各教科・学年の先生方からは、「生徒同士がお互いを評価していく中で生徒の相互理解や友達を尊重する態度が向上した」「総合的な学習の時間や探究活動の中で、課題設定がしっかりできるようになった」「友達の意見や発表を踏まえて発言できるようになった」などといった報告を受けるようになりました。

取り組んできた教育活動が、生徒の変容に有用であったということがエビデンスで示されただけでなく、生徒間のより良いコミュニケーションが促され、相互評価への意識が以前より高まりつつあります。今後は、先生方が「Ai GROW」の受検結果にアクセスする頻度を高めるとともに、獲得したデータを生徒指導・学級経営・授業改善などに生かすための校内研修の機会を増やしていきたいと思っています。