2030年には国内のデジタル人材が約79万人不足すると推定される中、文部科学省は、デジタル人材の育成と文理横断型の探究学習に取り組む拠点として全国約1,000校の高等学校を「DXハイスクール」に指定する計画を進めています。変わりゆく今後の社会で活躍していくためには、最先端の知識やスキルだけでなく、それらを生かし多様な状況に対応していく能力が求められます。
IGSは、1月31日(水)に、高校探究プロジェクトのリーダーであり東京学芸大学大学院 教育学研究科教授の西村圭一先生と、先進的な理数教育を推進するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校である徳島県立脇町高等学校の大久保邦博先生を講師に迎え、「DXハイスクール」申請予定校向けオンラインセミナーを実施。DX人材を育む文理融合的かつ探究的な学びとその効果検証についてお話しいただきました。
ご希望の先生方には、本セミナーのアーカイブ動画をご提供しております。こちらのフォームよりお申し込みください。
DX人材を育む文理融合型の探究アプローチ
【講師】
西村圭一先生(東京学芸大学大学院 教育学研究科 教授、「探究力測定」「社会実装シミュレーション型プログラム」監修者)
大久保邦博先生(徳島県立脇町高等学校 教諭)
【IGSのサービス紹介】
文理融合型プログラム「社会実装シミュレーション型プログラム」と教育効果検証ツール「探究力測定」のご紹介 :
野口祐子(Institution for a Global Society株式会社 教育事業部 事業部長)
西村先生のご講演のポイント
- 何のための学校教育かということは考えていても、それが日頃の教科教育とつながっていないケースも多い。それでは、生徒も何のためにその教科を学んでいるのかということが理解できない。学校を取り巻く状況が変わっているのに教科が昔から変わっておらず、社会とのズレが生じている。しかし、学習指導要領を変えることは容易ではなく、学校として時代にマッチした学びを探究の時間に実装していくことが必要。
- 今は文理融合の学びの時代。それぞれの学びや得意分野を持ち寄って考え方を出し合う、「共創」することが重要。多様な価値観を踏まえた合意形成、データやツールの活用、そして多様な他者との対話という段階的な広がりのある学びを作っていくというのが一つのビジョンになるのではないか。
- まず必要なのは、育みたい資質・能力と現状とのギャップを確認し、校内での目線を合わせること。教科内容の実施状況を点検し、3年間を見通した学習計画を立てること。そして、成果だけではなく過程をしっかり評価し、現状や向かうべき方向とその方法を生徒たちが自分でしっかり考えられるようになるようにガイドすること。学びに対する価値観をアップデートし、生徒たちが後で振り返ったときに「あの学校で良かった」と思える学びを提供できるようにすること。そのうえでDXをどう位置付けるかを考える。手段の目的化を防ぐためにも、この順番を大切にしたい。
大久保先生のご講演のポイント
- SSHになって3期目の4年目(計14年目)。Ⅲ期目のテーマは「地方における社会を変革し、未来を創造できる科学技術人材の育成」。その目標達成のために「実践する力」「社会に貢献する力」「自己実現する力」を「脇高版コンピテンシー」として定め、それらを育む場として協働的問題解決学習や探究型学習を位置付けている。また、カリキュラムの中核である課題研究を主体的・協働的に実践するための基盤となる資質・能力を「SW-ing SLC(SLCは「スキル・リテラシー・コンピテンシー」の略)」として定義し、全教科・科目を通してその育成を目指している。
- SSH事業は全生徒が対象だが、2年次より希望および成績により文理融合コースに選出。方言の分布調査など、文系的な要素をデータサイエンスで解決するような研究も行っている。「探究部」も存在し、50名程度の生徒が外部と連携しながら学びを進めている。このような取り組みで伸びた力を以前は自己評価のアンケートのみで把握していたが、客観的評価を実現する必要があると考え2020年から「Ai GROW」を導入。さらに、2022年度からは中核に据える課題研究で伸びた力を把握するため「数理探究アセスメント」も導入し、同時期受検校の平均から見える本校の強みや課題をフィードバックやカリキュラムの改善、SSHの事業報告に生かしている。
- 学校の置かれている状況や、強みも弱みも異なる中で正解はないが、SSHでは自校の強みをまず把握し、それを前面に押し出す計画が必要。他校と差別化できているか、現状に合っているか、現実的であるかが問われる。事業の評価や効果についても、定量化された報告内容を求められる。現状と成長を定量的に把握できる「Ai GROW」「数理探究アセスメント」は、本校にとっては欠かせないツールになっている。「DXハイスクール」も、そのようなビジョンがまずあり、その達成に向けてどうやってDXを活用していくのかということが問われるのではないか。自校の強みを把握するうえでも、効果を検証するうえでも定量的評価を組み込んでおくことが不可欠なのではないかと考えられる。
IGSのサービス紹介
※IGSのサービスおよび「DXハイスクール」支援事業の詳細についてはこちらをご確認ください
- 両先生のご講演にもあった通り、「DXハイスクール」申請に当たっても、まずは学校の育成ビジョンを描き、カリキュラム・プログラムを考え、それに必要な環境・設備を整えていくことが必要だと考えられる。それにはまずアセスメントによる現状把握が有効。ビジョンと現状の差を把握することで、各校の状況に合ったカリキュラムやプログラムを作ることができ、校内の目線合わせも実現できるはず。
- DX人材に求められる資質・能力を可視化するアセスメントとしてIGSが提供しているのが「探究力測定」(「数理探究アセスメント」+「Ai GROW」)。「数理探究アセスメント」は「課題設定力」「考察力」「実験計画力」「創造力」を測るオンラインアセスメント。レポートで結果を振り返るだけでなく解説書、ワークシートで学びを深めることができるほか、同時期に受検した学校の平均との横比較もでき、学校としての強みや課題も把握できる。「Ai GROW」はDX人材に欠かせないものごとに主体的かつ協働的に取り組む力を測るアセスメント。自己評価だけでなく友人からの評価を受け、その評価のブレをAIが補正することで客観的な評価を実現する。また、IGSはこれらの力を育み、DX人材育成を支える「社会実装シミュレーション型プログラム」も提供している。
- 「DXハイスクール」申請に当たって、IGSは教育プログラムの開発・運用、外部講師、指導委員の確保、事業報告の負担軽減など、さまざまな面でお役に立てると考えている。
「DXハイスクール」申請予定校の先生方には、ご希望に応じて本セミナーのアーカイブ動画をご提供しております。視聴をご希望の先生方は、こちらのフォームに必要事項をご記入のうえお申し込みください。
IGSは、教育プログラムの開発・運用、外部講師、指導委員の確保、事業報告の負担軽減などさまざまな面から「DXハイスクール」申請予定の先生方をサポートさせていただきたいと考えております。「DXハイスクール」への申請を検討されている学校・先生は、お気軽にご相談・お問い合わせください。詳細はこちらからご確認ください。