2023年2月27日に「Ai GROW」ご採用校の先生向けオンラインセミナーを開催。PBL(Project-based learning)を中心に据えた「探究的な学び」と「探究ハウス」での実践が全国から注目を集める東明館中学校・高等学校の山元祐輝先生を講師に迎え、前身となる探究コースにおける「Ai GROW」の活用とともに、「ChatGPT」による生徒の成長データの利活用の可能性について具体的にお話しいただきました。
【講師】
山元祐輝先生(東明館中学校・高等学校 探究ハウス長)
プロジェクト・ベースの学びを取り巻く「評価」「協働」の悩みを解決した「Ai GROW」
「偏差値時代の終幕」が叫ばれて久しく、学校推薦型選抜・総合型選抜入試での合格者の割合が50%を超え、ペーパー・テストで測定できる「学力」だけではない実践や課題研究がより重視されるようになりました。このような社会の変化を受け、探究型学習への期待やその価値はさらに高まっていると感じています。
私は現在、佐賀県にある東明館中学校・高等学校で広報部長の他、探究ハウス長を務めています。本校は2019年に、PBL(Project-based learning)を中心に据え、外部との連携を組み込んだ「探究コース」を新設。現在は「自律・自走」
▲グループディスカッションを進める探究コースの生徒たちの様子
しかし、この学びの形には2つの大きな課題がありました。まず1つ目は、学びを通して生徒のどのような力が伸びているのか評価しづらいことです。定期テストを実施しない中、小論文や成果物を評価して成績をつけたとしても、実際にはどのような力を伸ばすことができたのか「感覚でしか分からない」ということが悩みでした。そして2つ目は、とにかくディスカッションを重ねるこのコースでは、生徒同士でのいさかいが発生しやすいということです。相手のことをよく知ろうとしないまま、耳を傾けようとしないまま話し合いを進めたり、感情コントロールがうまくできない生徒がただ感情的になってしまったりと、信頼関係を築けるようにするまでとても苦労しました。これらの課題を解決する方法を探していたときに出会ったのが「Ai GROW」です。
導入後、早速「Ai GROW」で生徒たちの気質を測ってマッピングしてみると、集団の気質に大きなバラつきがあることが分かりました。学力も評定も考慮しない入試方式であることや、いさかいが多く起きることから予想はしていましたが、やはり主観的に感じていたことをデータで客観視できるのは大きな進歩だと感じました。
その後、「Ai GROW」でコンピテンシーを定期的に可視化していく中で、生徒たちは自身の強みに向き合うだけでなく、お互いの個人レポートを見ながら話し合うなど、違いを受け入れうまく協働する方法を自ら考えるようになりました。感情コントロールが苦手な生徒が「ディスカッションの中で感情的になっていたら教えてほしい」とあらかじめクラスメートに依頼する姿も見られました。「Ai GROW」も活用しながら少しずつ築き上げてきたこの対話や協働を支える素地が、その後のビジネスプラン作成やプロジェクト進行の成功に欠かせない強固な土台になっています。
生徒の心理状態の変化に応じた声掛けやサポートが可能に
また、本校ではコンピテンシーに加え、生徒個人や集団の心理的安全性や自己肯定感などの変化を測ることができるオプションの「傾向チェックテスト」も併せて活用しています。探究コースでは最初は与えられたプロジェクトをこなしながら経験を積みますが、2年生以降は自ら課題を見つけて取り組んでいく機会が増えていきます。自分で考えて行動する経験が生徒たちの幸福度や自己肯定感の向上に貢献することを期待し、実感もありましたが、「傾向チェックテスト」で実際にその成果を数値で確認することができ、とても嬉しく感じました。また、定期的に「傾向チェックテスト」を活用していくと、大きなプロジェクトの前などは特に、心理的安全性や自己効力感に変化が見られることが分かりました。生徒の変化を成長につなげていくために、声掛けやサポートを考えるきっかけにしています。
生成AIによって広がったデータ活用のさらなる可能性
このように「Ai GROW」を活用する中で、近年発展目覚ましい生成AIと「Ai GROW」のデータを組み合わせることで、より個に応じた生徒支援を実現できるのではないかと考え作成したのが、「Ai GROW Buddy」です。生成AIの進化は産業革命に匹敵するといわれるほど。実際、この1年でも相当な進化を遂げ、その活用可能性が大幅に広がりました。「Ai GROW Buddy」は、GPTsというChat GPTの機能を使って作ったものです。まずは「Ai GROW」の管理画面からダウンロードできる受検データ(気質とコンピテンシーのスコア) をアップロードします(アップロードの際には、生徒名を「生徒A」など匿名に変更するなど、個人情報の取り扱いに配慮)。次に、どんな分析をしたいかを伝えます。「創造性が高い生徒にどんな支援を行っていったらよいか」や「その生徒がさらなる成長を遂げるためにはどんなプロジェクトや探究コンテストなどの機会を与えたらよいか」「生徒の課題克服に向けたトレーニング案」などの問いにも的確なアドバイスをしてくれます。また、どのような分析をすべきか困ったときには、素直に「どんなことが分析可能ですか?」と聞けばデータから分析できることを回答してくれます。
▲「Ai GROW Buddy」の画面。「Ai GROW」のデータに基づき、各生徒に適した活動を提案している。
「Ai GROW Buddy」を作ったのは、 「Ai GROW」で得られた生徒の特性や成長を示すデータをより積極的に活用できれば、生徒支援はより効果的に、効率的に、 よりスムーズに行うことができると感じたからです。また、データを「活用する」ためには、とにもかくにも信頼に値する優秀なデータが必要です。評価、特にその多くが非認知能力であるコンピテンシーの評価にはどうしてもバイアスが生じますが、相互評価にAIによる評価のバイアス補正が加わる「Ai GROW」で得られるデータは、信頼性だけでなく、客観性をも担保された非常に優秀なデータです。実際に「Ai GROW Buddy」を使ってみると、われながら「ぴったりなアドバイスだな」と思うことが多いのですが、それは基になるデータの質が高いからにほかならないと感じています。
「Ai GROW Buddy」はChatGPTと「Ai GROW」のデータさえあればどなたでもご活用いただけます。生徒の見取りを「Ai GROW」に、分析を「Ai GROW Buddy」に任せることで、個々の生徒への声掛けやサポートに掛けられる時間が生まれます。一人でも多くの先生にご活用いただき、一人でも多くの生徒さんの成長と学びに貢献できれば幸いです。
■「Ai GROW Buddy」の提供(「Ai GROW」ご採用校の先生限定)
山元先生のご厚意により、「Ai GROW」ご採用校の先生には山元先生が作成された「Ai GROW Buddy」を無償でご利用いただけます(利用にはChatGPTが必要)。「Ai GROW Buddy」の利用を希望される先生は、IGS株式会社 教育ソリューション部(edtech@i-globalsociety.com)または弊社営業担当者までメールでお問い合わせください。