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2022.11.15

【セミナーレポート】第2回「Ai GROW」活用勉強会2022:コンピテンシーを意識させる生徒との対話軸の作り方(洗足学園中学高等学校 髙橋先生)

セミナーレポート

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2022年10月27日に「Ai GROW」ご採用校の先生向けオンラインセミナーを開催。共通言語化したコンピテンシー項目を学校生活全体に浸透させ、変化を自分の言葉で表現する活動を通して生徒に根付かせている洗足学園中学高等学校の髙橋道人先生に講師としてご登壇いただき、「Ai GROW」の活用方法を具体的にお話しいただきました。

 

【講師】

髙橋道人先生(洗足学園中学高等学校 教諭)

 

本校は、女性の社会進出を目指して1924年に建学された神奈川県川崎市にある完全中高一貫の女子学校です。時代の変化に合わせてカリキュラムを進化させながら、もうすぐ100周年を迎えようとしています。そのため、先生方の中にも、同じことをただ繰り返すのではなく、積極的に新しい仕組みを取り入れたり、カリキュラムを工夫したりする風土があります。

 

将来を見据えた自己分析実現のための「Ai GROW」

大学入学共通テストや新課程入試の導入、総合型選抜入試の拡大など、子どもたちを取り巻く環境にも大きな変化が起こっている昨今、これからの子どもたちには、学力だけではなく、自分自身を振り返りアピールできる仕組みが必要なのではないかと考えるようになりました。さらに、自分の将来について考える良い機会となる高校受験を経験しない本校の生徒たちにも、将来を見据えた自己分析をさせたいと思い、2021年度に全学年で「Ai GROW」を導入しました。

 

自分の「過去」「今」「将来」の言語化

大学に入るだけではなく、その後の学びをしっかりと支援していくためには、自分を客観視し、言語化してアウトプットすることが非常に重要です。これは、高校3年生になってから急に身に付けられるものではなく、早い段階から着手する必要があります。本校での取り組みの骨子を考える上で非常に参考になったのが、京都大学の総合型選抜入試の志望理由書である「学びの設計書」です。

この中には、1)高校在学中に取り組んだこと、そこから得たもの=過去、2)志望学部へ入学を希望する理由=今、3)大学においてどう学びたいか、卒業後学んだことをどう生かしたいか=将来について記入する欄があります。このように過去・今・将来を結び付けて自分のことをきちんと言語化できるようになるためには、まず過去の自分についての記録を蓄積することと、自分自身について把握することが不可欠です。「Ai GROW」は自分を知る有効なツールの一つとなっています。

 

コンピテンシーを生活に浸透させる3つの取り組み

「Ai GROW」の活用において目指したのは、コンピテンシーを生徒たちの生活にいかに浸透させていくか、ということです。例えばコンピテンシーが昼食時の会話で話題になるような存在になるには、生徒たちの中での「市民権」を得るには、学内での共通言語となるには、どのような取り組みを行っていくべきかと考えました。

一つめの取り組みは、学外活動報告会での活用です。本校では、生徒たちにボランティア活動などの学外活動を奨励しています。それらの活動の後には報告会を行っていますが、その中で、行った活動を通してどのコンピテンシーがどう変化したのかを必ず発表してもらうようにしました。発表で何度もコンピテンシーを耳にし、コンピテンシーがどういった場面で伸びる力なのかをイメージできたことで、生徒たちの中でもコンピテンシーの理解と、共通言語化が進んだように思います。

二つめの取り組みは、コンピテンシーを優劣ではなく個性として捉えるよう話をした上で個人レポートを返却することです。凸凹はあっていい、むしろなければおかしい、人と違って当たり前という話をしっかりとした上で受検結果を確認させました。これにより、生徒は「Ai GROW」の受検結果を受け入れやすくなり、自信を持って過ごせるようになったと感じています。今では生徒たちも結果を楽しみにしながら「Ai GROW」を受検してくれているようです。また、保護者にも同様の話をした上で受検結果を自宅に持ち帰らせ、家庭での話題としてもらうようお願いしています。このようにして、コンピテンシーを自分の優劣を付けるものではなく、「自分の個性を教えてくれるもの」として身近に感じてもらうことが、共通言語化をさらに押し進めるのではないかと考えています。

三つめの取り組みは、一連の自己分析を経験し、就職活動を終えたOGたちによる講演会です。先輩たちからそれぞれの強み(コンピテンシー)は何か、そして、過去・今・将来の自分をどうつなげて就職を勝ち取ったのかという話を聞くことで、自己分析やコンピテンシーの大切さを将来のキャリアと結び付けながらより具体的に理解してもらえたと感じています。

一方、「Ai GROW」の受検結果を用いた個別面談は行っていません。ダメ出しするようなことは避けたかったという理由もありますが、生徒たちが「Ai GROW」の受検結果を自分でどう捉えるかということを大切にしたかったからです。情報や意図が等しく伝わるよう、生徒全員の前でこのコンピテンシーをどう捉えるべきか、活用すべきかという話をした上で、あとは自分で受け止め、考えてもらうようにしました。もちろん、質問があったりアドバイスを求めたりする生徒には個別に対応していますが、あえて意図的に「返却しっぱなし」の状態を目指しています。

 

理解を浸透させるルーブリック作り

このようにコンピテンシーを共通言語化する取り組みを進めてはいるものの、やはり受け身ばかりでは本来の意味が伝わらないのではないか、コンピテンシーの中身についてもっと生徒たちが理解できる方法はないのだろうか、と考えるようになりました。そこで行ってみたのが、「コンピテンシーのルーブリック作り」です。

「Ai GROW」の3回目受検が終わった後の生徒たちに、まずは6つのコンピテンシー(「創造性」「論理的思考」「自己効力」「表現力」「柔軟性」「影響力の行使」)について自分たちの言葉で定義してもらう時間を取りました。その上で、これができたらA(2点)、B(1点)、C(0点)というルーブリックを作ってもらいました。「影響力の行使」では、「文化祭などでテーマを決める時に鶴の一声のように全体をまとめること」など、大人が作るとこうはならないというアイディアがたくさん出て、生徒たちはこう感じているのだな、とわれわれ教員の学びにもなりました。

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アウトプットの場としての面接

また、自分の「過去・今・将来」を言語化するアウトプットの場としては、校長面接も活用しています。内部進学にあたって行われる校長とのグループ面接で、中学3年間で何をやってきたか、今何をしているか、高校でどうしていくつもりかということを話してもらいます。実際、「Ai GROW」を軸に前述の自己分析を行ってきた2021年度の中学3年生の言語化能力には非常に驚かされました。今、高校生となった彼女たちの様子を見ていても、お互いの成長・個性を認め合う文化が根付き、きちんとした軸を持ちながら自走できていると感じます。

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このようにさまざまな取り組みを行う中で実感しているのは、手段を変えながら何度も何度もしつこく言葉にしてもらう作業を繰り返すことで、自分の過去・今・将来、そしてコンピテンシーを俯瞰して理解し、自分のものにしていくことが大切なのだということです。「またそれですか?」と言わせたら勝ち。生徒たちのその言葉を楽しみに、今後も「Ai GROW」の活用とコンピテンシーの共通言語化に取り組んでいきたいと思っています。