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【活用事例】進路実現の先に「創造したい社会」がある─アセスメントが探究とキャリアを結ぶ

群馬県立太田高等学校

【活用事例】進路実現の先に「創造したい社会」がある─アセスメントが探究とキャリアを結ぶ

 

進路実現の先に「創造したい社会」がある─アセスメントが探究とキャリアを結ぶ

群馬県立太田高等学校

 

「育てたい力を定量評価できる」─「Ai GROW」導入の決め手


群馬県立太田高等学校は、創立128年の伝統をもつ県内有数の進学校である。「文武両道」「質実剛健」の校風の下、難関大学への進路実現を目指しながら、独自の探究活動を展開している。同校で探究を統括する古畑春樹先生に、「Ai GROW」および「数理探究アセスメント」導入の経緯と活用の実際を伺った。

同校ではグラデュエーション・ポリシーとして、「基礎的な知識・技能」「プレゼンテーション能力」「コオペレーション能力」「探究力」「失敗力」「メタ認知能力」を掲げている。これらの資質・能力の成長を可視化したいという課題意識が、「Ai GROW」導入のきっかけとなった。

「本校の育てたい6つの資質・能力を定量評価できるという言葉を聞き、『これだ!』と思いました。これらの資質・能力の成長をどうやって測ればいいのか、ずっと課題として感じていたのです」と古畑先生は当時を振り返る。具体的に同校の取り組みを把握した上での提案があったことが、導入の決め手となった。



「失敗を恐れずチャレンジする」─独自の資質・能力としての「失敗力」


グラデュエーション・ポリシーに掲げられる6つの資質・能力の中で特徴的なのが「失敗力」だ。古畑先生自身がこの資質・能力を提案し、将来構想委員会での議論を経て採用された。

「本校の生徒の中には、授業中に発言して間違えたら恥ずかしいので挙手をしない、失敗するくらいならやらない方がよいなど、間違えることや失敗することに抵抗感を抱く生徒もいます。でも失敗があるから成長がある。いろんなことにチャレンジしてほしいという思いから、この力を入れました」と古畑先生は語る。「失敗を恐れずチャレンジする」これが、同校の探究活動の根底にある理念にもなっている。



「0から1」「1から10」─進路実現につながる探究のデザイン


同校の探究活動は、進路実現と密接に結びついている。「将来創造したい理想の社会」を設定し、その実現のために探究活動を行うバックキャスティング型のアプローチを採用。「進路実現の先に自分が創造したいと願う社会がある」「創造したいと願う社会があるから自分の進路希望が見えてくる」という双方向の関係を意識させている。

探究活動は「0から1」と「1から10」の2段階で構成される。1年次の「0から1」では、現状の社会を知ることでイマジネーション(想像)を広げる。株式会社SUBARUなど約100社への企業訪問を通じて、生徒は今の世の中の仕事を知り、作りたい社会を思い描いていく。2年次の「1から10」では、現実にない社会を創造するクリエイティブな力を育む。自分の探究テーマに合った企業や大学などを自ら探し、質問を投げ掛けて探究を深めていく。「大学入学後のミスマッチを防ぐ意味でも、高校時代から進路と探究を結び付けて考えさせることが重要」と古畑先生は説明する。

フィールドワーク先の企業の方から、事業について説明を受ける2年生の様子
▲フィールドワーク先の企業の方から、事業について説明を受ける2年生の様子。

毎年10月、2年生が1年生に向けてフィールドワークの成果を伝える「個人探究中間発表会」の様子
▲毎年10月、2年生が1年生に向けてフィールドワークの成果を伝える「個人探究中間発表会」の様子。




教員間の協力体制と負担軽減の仕組みづくり


探究活動を組織的に進める上で欠かせないのが、教員間の連携体制だ。同校では、担任教員への負担を軽減しながら、全校的に探究を推進する仕組みを構築している。

「私の方で2学年分の授業の流れを資料も含めて用意し、各学年の探究部の先生方と共有・調整してから学年会議に展開しています。実際の授業はほぼリモートで行い、同じ情報を生徒に届けられるようにしています」と古畑先生は語る。生徒と先生がやり取りする場面では、ルーブリックを用いて具体的な指示を出すことで、担任の先生方も抵抗なく取り組めている。

この体制は、3年間のNPO法人による伴走支援を経て確立された。現在は毎年少しずつ改善を続けながら、「生き物」である探究活動に対応している。



「数理探究アセスメント」の導入効果─学力との相関を超えて

「数理探究アセスメント」の導入により、これまでルーブリック評価にとどまっていた探究活動の評価が定量化された。「課題設定力」「実験計画力」「考察力」「創造力」という探究に特に親和性の高い4つの力の習熟度や成長を客観的に測定できることに、古畑先生は大きな価値を感じている。

興味深いのは、学力との相関が必ずしも高くないという結果が出ていることだ。「学力がそこまで高くない生徒でも、ある項目で高い数字が出ている。逆に学力が高くても弱い部分がある。この結果を使って、『こんなに力があるのだから、こういう取り組み方をしたらどうだろう』という声掛けができる」と古畑先生は手応えを語る。

また、「Ai GROW」の相互評価も好影響を生んでいる。自己評価では自信のない傾向がある同校の生徒にとって、他者からプラスの面を捉えてもらえることが自己肯定感の向上につながっている。



探究とキャリア教育をつなぐ「ハブ」として


今後について古畑先生は、アセスメントを年複数回実施することで、生徒の成長を可視化していきたいと考えている。「数理探究アセスメント」は1年生の入学直後と年度末の2回、「Ai GROW」は8月・12月・3月の年3回実施を検討中だ。

「生徒自身が『これやって意味あるの?』と感じることもあるかもしれない。しかし、最初と最後で自分の成長を見取れると、『やってよかった!』という感覚になる。テストの点にこだわる生徒が少なくない中、さまざまな成長を客観的に把握できることが生徒にとっても有意義だと思います」と古畑先生は語る。

さらに、志望大学のアドミッション・ポリシーと「Ai GROW」で計測するコンピテンシーをマッチングさせ、進路指導に生かすことも視野に入れている。コンピテンシーを活用した推薦書作成支援など、業務効率化にもつなげたい考えだ。

「進路とキャリアと探究をつなげる、そのハブ的な役割をアセスメントが担えるのではないか」と古畑先生は期待を寄せる。探究活動の先に進路があり、進路の先に探究がある─そんな循環を生み出す同校の取り組みは、進学校における探究活動のモデルケースとして注目される。