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【活用事例】自由な環境が育んだ「創造力」が「探究力測定」で明らかに(東明館中学校・高等学校)

聖光学院中学校高等学校

【インタビュー】正解のない探究の道のりを指針として支える「探究Navigator」

髙木俊輔先生

探究

2023.06.14

正解のない探究の道のりを指針として支える「探究Navigator」

 

子どもたちが生きるこれからの時代は、目まぐるしく社会の状況が変わる予測不可能な未来。そこで必要になるのは自ら課題を設定し、調べ、考え、決定し、行動する力です。その力を育む絶好の機会である「探究型学習」ですが、「調べ学習に終始してしまう」「適切な評価が難しい」「アウトプットやその先の成長へどうつなげていけばよいか」といったお悩みを多くうかがいます。

探究の事前学習からアウトプット(研究レポート)までの道のりを、指導マニュアル、評価ルーブリック、研究レポート事前学習動画などのパッケージでサポートする「探究Navigator」は、正解のない探究型学習の中で指針となる「探究型学習のコンパス」的サービス。探究の学びを「社会で通用する力」へとつなげるための成果物の第三者評価も含まれています。学びのプロセスとその成果をいかに語れるかは、拡大しつつある総合型選抜入試においても不可欠な力です。

今回は、アセスメント・デザイナーとして本サービスのマニュアル・ルーブリック作成にご協力いただいた聖光学院中学校高等学校の髙木俊輔先生に、このサービスに込めた思いや具体的な活用方法などをうかがいました。

 



2022年度に全面実施された高等学校学習指導要領においてキーワードとなった「探究型学習」。各校さまざまな取り組みが進んでいる中、「問いが立てられない」「どう評価をすればいいのか分からない」「どんなアドバイスをすればいいのかイメージできない」など多くのお悩みの声も聞こえてきます。

しかし、私がそれらのお悩みを聞いて感じるのは、「探究型学習では、そしてその各フェーズでは何が求められているのか」が明確になっていないことが、悩みにも、負担感にもつながっているのではないかということです。そのため、「調べ学習」に終始してしまい、そこからの脱却方法が分からず困っているケースが多いように感じます。先生方の多くは学生時代、教職課程において、このような「正解のない学び」に取り組む際に必要な教師としてのトレーニングを受ける機会がなかったのではないでしょうか。 悩み、迷うのは無理もないことです。

探究型学習とは、しっかりと動機と目的を持って問いを立て、資料を集め、方法を規定して、検証し、考察し、学びをアウトプットする一連のプロセス。その各フェーズで何を、どのように行うべきなのか、さらに上を目指すためには何をすべきなのかを明確に示したものが「探究Navigator」のルーブリックです。

ルーブリックは、学習の達成度を測る評価手法の一種。2010年以降、ペーパー・テストでは達成度の評価が難しいアクティブ・ラーニングの導入に伴い次第に注目されるようになってきたのは喜ばしいことですが、総括的評価を行う際に突然「後出しじゃんけん」のように登場するケースも多く見られます。ルーブリックは本来、学習活動が始まる前に作成し、学習者にも共有して学習の道しるべとすべきもの。問立てや研究手法の記述など、各観点ごとにどんなことが求められているのかを理解するのを助け、ルーブリックの文言と自分の現在地を比べながら進むことでさらに上の段階を目指すための指針であるべきなのです。

「探究Navigator」は、探究におけるこの「指針」を目指して生み出されたサポートツール。

・探究における各フェーズの達成度が5段階で示されたルーブリック
・探究学習指導マニュアル
・アウトプット(研究レポート)作成に向け理解を深めるための動画
・アウトプット(研究レポート)の第三者評価


がセットになっています。

 



ルーブリックは観察可能な行動(何をするか)と質を表す表現(どのようにするのか)をもとに構成されているため、生徒と先生間、先生と別の先生の間で達成度に関する明確な共通認識を持つことができます。指導マニュアルには各段階の達成度に応じた声掛け例も掲載。さらに、記載された情報のみに基づいたバイアスのない評価を受けることができ、他校との比較も可能になるアウトプット(研究レポート)の第三者評価は、社会で求められる「伝える力」を育むうえでも欠かせないポイントです。

具体的な活用方法としては以下を基本とし、学校の状況に合わせてアレンジしていただけたらと考えています。


【探究型学習を始める前】
生徒:
事前学習として探究の流れ、ルーブリックとアウトプット・イメージを深める動画を確認。さらに付属のサンプルレポートが各評価観点でどの段階に当てはまるかを議論して生徒自身が評価者の視点も体験することでルーブリックに関する理解を深める。
先生:
上記を実施し、先生・生徒間で進め方や達成度について共通の認識をもてるようにする。

【学習中】
生徒:
ルーブリックを指針として常に達成状況を確認しながら進むことで、一段深い探究を、自走する形で行うことができるようになる。
先生:
ルーブリックおよび指導マニュアルを活用し、各生徒の達成度を確認しながらそれに沿った適切な声掛けを行ってサポートする。

【事後学習】
生徒:
ルーブリックを用いて達成できたこと、達成できなかったことを振り返って次の目的地を見つけ、より豊かな学びへと出発することができる。アウトプット(研究レポート)の第三者評価により、「取り組みを文章で分かりやすく第三者へ伝える」という社会で求められる力を身に付けることができる。
先生:
ルーブリックに基づきブレのない評価を実施できる。指導マニュアルを参考に、各生徒がより豊かな学びへと出発するうえで適切な声掛けを行う。


山登りをしていても、現在地と頂上までの方向や距離が分からなければ頂上を目指すことはできません。頂上への道のりはさまざまですが、私は探究型学習も同じだと考えています。求められるものをまずしっかりと理解したうえで指針を手に自分の現在地を確認しながら次へ向かう。アウトプット(研究レポート)はバイアスのない第三者にも評価してもらい、指針を基に活動全体の振り返りを行ってより豊かな学びを目指す。このサイクルを回していくことで、調べ学習ではない「探究型学習」を、そして探究を通した生徒の能力の育成、さらなる成長を実現していくことができるのではないでしょうか。「探究Navigator」は多くの先生、生徒の皆さんの豊かな探究をサポートするツールになるのではないかと思っています。