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2023.03.20

【セミナーレポート】第3回「Ai GROW」活用勉強会2022:「Ai GROW」とアンケートから見出す探究・研修の成果と次の一手(聖徳学園中学・高等学校 山名先生)

セミナーレポート

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2023年2月15日に「Ai GROW」ご採用校の先生向けオンラインセミナーを開催。授業アンケートと「Ai GROW」結果データを重ね合わせて分析し、生徒への関わり方、授業改善計画などへの活用を目指して取り組まれている聖徳学園中学・高等学校の山名和樹先生に講師としてご登壇いただき、「Ai GROW」の活用方法を具体的にお話しいただきました。

 

【講師】

山名和樹先生(聖徳学園中学・高等学校 グローバル教育部長、臨床心理士)

 

本校は東京都武蔵野市にある私立の中高一貫教育校です。STEAMとグローバルを両輪として、「正解のない問題」に対して臆することなくチャレンジする力を育むことを目標としています。プロジェクタやホワイトボード、Apple TVが全教室に完備され、生徒は全員iPadを持ち、ICTのサポート教員やチューターも常駐。充実したICT環境が生徒の学びを後押ししています。

私自身は、グローバル教育部の責任者ですが、臨床心理士・公認心理士でもあります。もともとはスクール・カウンセラーとして本校でのキャリアをスタートさせましたが、10年ほど前に、学校としてグローバル教育を拡充していくに当たってその担当者となったことから現在にいたります。

本校は「Ai GROW」を導入して2年目。初年度は別部署の管轄下で活用をしていましたが、「心の成長」を目標としている本校の探究型学習を通し、探究の各活動を通して身に付く資質・能力を明らかにするために活用できるのではないかと考え、今年度より私の部署が主体となって運用しています。

 

グローバル社会に貢献できる人材育成を目指す探究型学習

本校の探究型学習は、受験のある高校3年生を除いた中学1年生~高校2年生を対象とし、グローバル社会で貢献できる人材を育成するべく、プログラムを段階的に組んでいます。情報と総合の2科目を基盤とし、情報では技術的な面を、総合ではプロジェクトの進行を担当し、相互に学んだ内容を踏まえて進行しています。

探究型学習の最終学年である高校2年生では国際協力プロジェクトを推進します。目標は、担当国に定めた開発途上国の課題を発見し、その課題に対して何らかの貢献をすること。1学期は個人ワークとして日本の国際協力や開発途上国について調べ、企画動画を作成して発表。全員分の動画を見た後にどの企画を進めたいかアンケートを取り、グループを作ります。5票以上を集めた企画は採用とし、その他の企画は要素を抽出して別の企画に生かしています。

2学期はグループワークでアイデアを深めていきます。スタートアップ企業のビジネスモデルを可視化するためのツール、「リーンキャンバス」を授業用にアレンジしたものを活用してアイデアを発展させながら中間報告会を実施。報告会には大学の先生や起業家などの識者を招き、社会的・学問的目線でアドバイスをいただきました。

11月頃からは、いよいよ計画を実行に移す時期。一人500円の予算をもとに、段ボールでプロジェクターを作ったり、水を安全に飲めるようにする「ライフストロー」を購入して送ったり。オリジナルのLINEスタンプを作成して資金を増やそうとした生徒もいました。状況次第ですが、開発途上国へ実際に訪問することもあります。

 

探究型学習の次の一手を明らかにする「Ai GROW」×「アンケート」

このように進めている5年間にわたる探究型学習。総合科と情報科で話し合ったうえで、一連の活動で生徒に身に付けさせたい資質・能力を「課題設定力」「論理的思考」など「Ai GROW」で計測できる25のコンピテンシーの中から10コンピテンシーを抽出し、活動前後の「Ai GROW」受検結果を生徒の成長、そして教育プログラムの効果を把握するための指標として活用しています。しかし、現状にとどまらず教育プログラムの「次の一手」を明らかにし、さらなる生徒の成長を実現するためには、探究型学習全体だけではなくその中の一つ一つの取り組みが能力向上にどう貢献しているのか、ということを確認する必要があります。そこで活用しているのが「授業アンケート」と「Ai GROW」の結果を掛け合わせるという手法です。

この手法を活用する、しないにかかわらず、探究型学習において重要なのは、一連の取り組みを通して育みたい力を定めておくことです。このゴールを議論せず、なんとなくで進めてしまうケースも多いようです。効果測定の「Ai GROW」を導入していれば、効果測定を容易にするためにも、「Ai GROW」のコンピテンシーの中から洗い出すのがお勧めです。

具体的なアンケートの内容ですが、まず、「この授業を通して身に付いたと考える力」「身に付いていないと考える力」を尋ねる設問を用意し、選択肢に「育みたい力」として定めたコンピテンシーを列挙します。それらの力がどういったものか生徒がきちんと理解したうえで回答できるよう、各コンピテンシーに簡単な説明を加えておくことをお勧めします。さらに、「それらの力が身に付いたと感じる理由」「身に付いていないと感じる理由」を尋ねる設問を用意し、選択肢に探究学習の各取り組みや要素を列挙します。

もちろん学習前後の「Ai GROW」の実際のスコアからも各コンピテンシーの変化を確認し、アンケートの結果と「Ai GROW」の実際のスコアをもとに、総合的な分析・考察を行います。

例えば、本校のあるクラスの探究型学習に対するアンケートでは、「身に付いた力」として「課題設定」「論理的思考」「創造性」「興味」「表現力」が多く挙げられました。「身に付いていない力」として有意に高かった項目はありませんでしたが、しいていえば「ヴィジョン」「地球市民性」が他項目より高めという結果でした。「身に付いたと感じる理由」はロジック・ツリーや「リーンキャンバス」、情報の授業で学んだアプリ、グループワークを通じた他者との協働などが挙がり、「身に付いていないと感じる理由」は「SDGsをはじめとする問題に興味がないから」という回答が一番多い結果となりました。

 

これらを考察すると、各ツールや情報で学んだアプリがコンピテンシーの成長に特に寄与していること、「柔軟性」や「影響力の行使」を向上させるためにグループワークの方法の改善が必要なこと、そして「ヴィジョン」を向上させるため、自身のキャリアと授業の結び付きを具体的にイメージさせる必要があることが見えてきました。

 

海外研修プログラムでも「Ai GROW」×「アンケート」を活用

高校2年生の海外研修で私が同行したマルタでも、「次の一手」を見出すための取り組みを行ってみました。まずは研修プログラムを組むに当たり、身に付けさせたい力を「Ai GROW」のコンピテンシー項目から選出。観光や学校交流などの各プログラムで充実した研修旅行を終え帰国した後、前述のようなアンケートを実施しました。アンケートと研修旅行前後の「Ai GROW」受検結果を掛け合わせて総括したところ、海外研修を通して生徒の興味を高め、成長を促すことができたことが高い満足度につながったのではないか、事前指導で意識させたことで「課題設定力」が伸びた実感を得られたのではないかと考えられる一方、リーダーの力が強いことで声を上げにくかった生徒がいたのではないか、発表の場を多く設けたものの「表現力」については成長実感を得られていないのではないかという考察などが得られました。ここから、来年のマルタ研修に向けた「次の一手」としては、個々が活躍する場を設けること、発表のありかたを工夫すること、個々の力を生かし、多様な意見をまとめられるようなリーダー教育を行うことなどを考えています。

 

成長戦略型探究学習と総合型選抜入試をも見据えた「Ai GROW」活用

本日、このセミナーの前に各校の取り組みの発表を行う場に出かけていたのですが、想像以上に多くの学校が探究型学習に力を入れていることを知り、驚かされました。総合型選抜入試の拡大など、大学入試も変わりつつあります。3年間でどのような学びを経てどんなアウトプットを出したのかということが求められる総合型選抜入試に対するひとつの鍵が探究型学習であることは明らかです。総合型選抜では、自身の資質・能力がどのような経過で伸び、それを大学の学びを通してどう生かしていきたいのかを説得力をもって他者に語れるスキルが不可欠。それを支える「Ai GROW」は探究型学習、そしてその先にある総合型選抜に向けた導入校のキラーコンテンツになってくるのではないか、と個人的には大きな期待を寄せています。

これまで探究型学習は学校においていわば「はじっこ」の存在とされているケースもあったかもしれませんが、今後は確実にメインの存在となっていくでしょう。すでに「ど真ん中」に据えている学校も多くあります。コロナ禍で中止となってきたさまざまな研修も今後復活していくと考えられる中で、探究型学習や研修をなんとなく進めるのではなく、「Ai GROW」を活用してコンピテンシー向上につながっている活動とそうではない活動を洗い出し、「次の一手」につなげる。このような「成長戦略型探究学習」を実現していくことが重要なのではないでしょうか。