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2022.12.26

【セミナーレポート】第17回 生徒の資質・能力の育成とその適切な評価の実現に向けて(大阪)(追手門学院大手前中・高等学校 土谷先生)

セミナーレポート

大阪-3

 

学習指導要領の改訂により、従来の学力にとどまらないさまざまな資質・能力の育成が求められています。これはすでに入試形態の変化にも表れ、その変化は今後さらに拡大していくことになるはずです。一方、従来の学力とは異なる非認知能力の育成とその評価に苦慮されている学校は少なくありません。では、生徒の資質・能力の成長をいかに促し、その成長を多面的に、そして適切かつ公平に評価していけばよいのでしょうか。

2022年12月3日(土)、大阪で行った本セミナーでは、追手門学院大手前中・高等学校(大阪府)の土谷啓介先生を講師に迎え、同校の多面的評価や「Ai GROW」の学内共通言語化を通した生徒支援の取り組みを具体的にご紹介いただきました。

 

【講師】

土谷啓介先生(追手門学院大手前中・高等学校

 

本校は、大阪の中心部にある男女共学の中高一貫教育校です。学院全体として、自分の考えをしっかり持ち、自らの成長に向かって努力すること、豊かな社会性を持ち、世のため人のために尽くすことを指す「独立自彊・社会有為」という教育理念を掲げています。私の所属する学習推進部は、生徒の学び全般に関わる企画運営を行う部署です。第一志望の進路実現に向け、生徒のキャリア発達を促進し、生徒の視野可能性を限りなく広げることを目指しています。その業務は、教員の指導力向上を目的とした校内研修の企画・実施、探究活動のカリキュラム・マネジメント、国際教育の企画・推進、ICTの管理・運用と多岐にわたります。

 

コンピテンシー・ベースの教育へのシフト

本校では、生徒が進路を主体的に決める流れを強化したい、テストだけに注力する文化を変えたい、という考えの下、目標を「生徒の第一志望進路100%実現」に見直しました。また、前述の教育理念「独立自彊・社会有為」に基づき、3年前に学校コンピテンシーを策定。これを生徒たちにも共有し、段階的かつ効果的に伸ばしていくために、学校全体でコンピテンシー・ベースの教育に取り組んでいます。

 

 

さらに、目標見直しを行い、コンピテンシーを策定した上で、生徒との関わりを増やすため、追手門モジュール(通称OM、月~金の授業終了後の25分間)という時間を時間割に組み入れました。この中で、進路や学習だけに限らず各先生がさまざまな角度で生徒にアドバイスを行うようにしています。

この目標見直し、コンピテンシー・ベースの教育へのシフト、OMの導入により、こだわりを持って第一志望校を選ぶ生徒は着実に増加し、総合型選抜入試を目指す生徒も増えてきました。私は探究型学習も担当していますが、コンピテンシーを生かし、前向きに取り組む生徒も多くなったと感じています。それらは、大学の合格者数にも着実に表れています。

 

客観的かつ多面的な評価を求めて

このような変革の中で、生徒にどう関わったら良いのかと一部の先生から声も上がりました。経験が少ない先生も自信を持って、経験豊富な先生も経験則のみに頼らずに指導できるよう、客観的かつ多面的な評価の仕組みを求めていたときに出会ったのが「Ai GROW」でした。経験則も必要ですが、それを裏付ける根拠になるようなデータがあれば、生徒一人ひとりによりフィットしたアドバイスができるのではないかと考え導入を決めました。

 

「Ai GROW」の「共通言語化」

生徒一人ひとりが自信を持てるようになればと導入した「Ai GROW」ですが、宝の持ち腐れにならないよう活用していくためには、校内の「共通言語」としての浸透が重要です。本校ではまず、基本情報を事前に校内全体で共有することから着手。気質診断もより分かりやすく中高生に応じた形で書き換え、授業において同じ内容を扱う場合も、「Ai GROW」の気質診断の結果を参考に方法を見直しながら進める重要性を説明しました。

 

さらに、学校コンピテンシーと「Ai GROW」のコンピテンシーの対応表を作り、先生同士、先生と生徒、生徒同士など、どんな場面においてもコンピテンシーを意識した対話を行える環境作りに努めました。

 

 

このような活動で基盤を作った後、教務部と連携して定期考査の時間割の中に「Ai GROW」の受検を組み込んでもらい、現在は年3回受検の年間計画を立てて進めています。

受検直後に個人レポートを通じて自身のさまざまなコンピテンシーの成長を確認できる「Ai GROW」。しかしその結果を「見て終わり」にしては意味がありません。前述のOMの時間を活用した生徒による自己分析、クラス担任によるクラス分析、さらに日程を決めて研修という形で行う学年分析の時間をしっかりと確保し、深い分析を行うことでさらなる「共通言語化」を図っています。

生徒による自己分析では、前回との比較を行い、伸びたコンピテンシー、以前から高いコンピテンシーを中心に自身の強みを確認し、行事やクラスへの貢献方法を考えてもらいます。担任分析では、「Ai GROW」管理画面に新たに搭載されたクラスのコンピテンシーの平均とばらつきを確認することができる「MVプロット」を活用し、クラスと各生徒の状況を確認し、どのような声掛けが有効か考えます。こうして、生徒も担任もそれぞれ「Ai GROW」の結果を確認・分析した上で面談を行っています。

 

 

学年分析では、まず各学年で定めている学年目標達成に向けて特に伸ばすべきコンピテンシーを挙げます。その上で学年団の先生の実感値と「Ai GROW」受検結果を照らし合わせながら学年クラスの現状を分析し、学年で成長を期待するコンピテンシーをさらに伸ばていくための方策を考えてもらっています。

 

「独立自彊・社会有為」を育む多面的評価

本校では、このようにコンピテンシーを生徒の成長や学年の方向性などを議論する際の共通言語日々の活動に溶け込ませ生徒成長の多面的評価、そして生徒支援へとつなげる取り組みを行っています。今後は、保護者への定期的な発信により保護者も巻き込むこと、模試のようにすべての先生に分析を浸透させることを目指し、これまで以上にコンピテンシー・ベースの教育を根付かせていきたいと思っています。これらの活動を通して可能性や視野を大きく広げた生徒が「独立自彊・社会有為」を実践できる若者として羽ばたいていってくれたらと願っています。