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【探究への道 第61回】林 歩実先生(千葉県立松戸向陽高等学校)

探究への道バナー

「自分を好きになる」ための探究設計 ─自己とじっくり向き合い、自分の言葉で表現する「よさ」を育む3年間のプロセス

林先生画像(トリミング後)
千葉県立松戸向陽高等学校
林 歩実先生




自尊心を育み「自分を好きになる」探究

本校では「探究学習を通して自尊心をもち自分のことを好きになる」「自身の探究の成果を自分の強み・よさ・変化・成長と結び付けて表現することができる」という目標を設定し、1年生は自己探究、2年生の前半は自分たちの学校生活に関するグループ探究、そして2年生の後半から3年生にかけてはゼミ探究を行っています。生徒の多くは中学校までの成功体験が少なく自己肯定感が低いことや、進路選択時に「やりたいことがない」と話す現状があることから、一昨年度よりカリキュラム設計と授業実践に本格的に取り組んできました。

 



他者と関わりながら自分のことを言葉にする

今の生徒には、本格的な探究学習のサイクルに入る前段階の「土台づくり」として、他者と関わりながら自分の考えを言葉にする練習や経験が必要であると考えています。その中には、自らの感情や気持ちに向き合い言葉にする練習や、他者の意見を一度受け止める練習、人前に立って自分を語る経験、そして多様な大人と関わることで自らの生き方・在り方を考える経験などが含まれます。こうした経験を積み重ねてこそ、生徒自身が「本当にやりたいと思える学び」や「納得のいく課題設定」にたどり着くことができるはずです。そのため、最初の1年間は自分自身とじっくりと向き合い、表現する力を育むために時間を使います。このための授業内容や教材も、試行錯誤を重ねながら先生方と作成しています。

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▲1年生1学期に作成する「じぶんマップ」。好きなことや苦手なこと、こだわりを深掘りしながら、クラスメートに自分を表現する。

 



生徒も教員も自分の「やってみたい」ができる環境に

着任当時は、「総合的な探究の時間」のカリキュラムが具体的に定まっていない状態でした。そんな中、「外部の研修に参加しながらカリキュラム設計をし、本格的な授業実践をしたい」という私の提案を、管理職や主任の先生方は快く受け止め、挑戦の機会を与えてくれました。生徒はもちろんのこと、教員自身が「やってみたい」を素直に口にできる環境は、非常に重要だと実感しています。その後、校内研修や探究の検討委員会を定期的に設け、多くの先生方の視点を交えながら「生徒にどのような経験をさせたいか」を考えてきました。生徒に育んでほしい資質・能力について議論した結果、それらは本校の校訓である「向学・自立・共生」に自然とつながっていき、全員が「目指したい方向はみんな同じである」と気づくことができました。

   
▲認定NPO法人カタリバ主催の教員向け研修『探究スタートアップラボ』(一般財団法人三菱みらい育成財団の助成プログラム)、当時の教頭・教務部主任・進路指導部主任とカリキュラムについて話し合う様子。

新しく作成したカリキュラムの作成と実施を始めたのは2025年度のことです。2026年度は、前年度の経験を基に大きく変更した点もあり、正直なところ、まだ生徒自身にどのような変化が生まれているのかははっきりとわかりません。しかし、自らの意志を自分の言葉や態度で伝えようとする生徒や、日常生活の中で課題意識をもち、それを解決したいと考える生徒が確かに増えたように感じています。例えば、欠席がちだった生徒が「探究のある日は楽しいから学校行く」と話してくれたり、ゼミ探究を終えた昨年度の3年生からは、「人前で発表しても緊張しなくなった」「伝えたいことを整理して表現できるようになった」「自分で1から調べたり人に聞いたり、今までになかった力がついた」といった声が聞かれるようになったり、自らの成長を真っ直ぐに認識し、自分の言葉で表現する姿が見られました。

  
▲3年生のゼミ代表者が学年発表をする様子。楽しみながらこだわりをもって探究に取り組む生徒の真剣な姿は、先生方の想像を超えた。

 



教員だって、トライ&エラーを繰り返してもいい!

高校生が探究に取り組む姿は、今や当たり前の光景になりつつあるように見えます。しかしその一方で、「総合的な探究の時間」が「本来あるべき姿」になっていないと悩まれている学校は、まだまだ多く存在すると感じています。「なんとかしたいけど……」と思われている先生がいらっしゃれば、まずは協力してくれる同僚を1人でも多く巻き込んでみてください。あるいは、学校外で同じ悩みを抱えている仲間とつながる場へ足を運んでみてください。「なんとかしよう!」と奮闘している先生が、全国にはたくさんいます。学校の状況が自分の一声から変わっていくことに対して怖さを感じるときもありますが、きっと、時間はかかっても、生徒や周りの先生方から聞こえてくる声がよりよい方向に変わっていき、「やってよかった!」と思える日がくると信じています。

 

千葉県立松戸向陽高等学校
https://cms1.chiba-c.ed.jp/m.koyo-h/
note HP
https://m-koyo-hs.note.jp/

※内容はすべて2026年9月現在の情報です。