Ai GROW等の学校での活用事例

【活用事例】進路決定後の「その先」を見据えて—卒業直前の自己理解が生徒の背中を押す

作成者: Ai GROW 運営事務局|Mar 19, 2026 3:02:48 AM

 

進路決定後の「その先」を見据えて—卒業直前の自己理解が生徒の背中を押す

静岡県立島田商業高等学校

 

「感覚」だけでは伝えきれないもどかしさ


高い就職内定率を誇り、地域産業を支える人材を輩出し続ける静岡県立島田商業高等学校。「身近な課題を発見し、解決に向けて主体的にチャレンジすることで、地域社会で活躍できる生徒の育成を目指す」というスクール・ミッションの下、商業教育の実践に力を注いでいます。

そんな同校が直面していたのは、「進路が早期に決まる実業高校ならではの課題」でした。秋口に就職先が決まった後、卒業までの数カ月間をどう過ごさせるか。社会に送り出す直前の生徒たちに、学校・教員として何を手渡せるか。3学年主任の上畠直樹先生と、学年団で指導にあたる戸上奈穂子先生にお話を伺いました。

進路が決まること自体は喜ばしいことですが、そこから卒業までの期間に、生徒たちには「次のステージ」に対する意識をしっかりと高めてもらいたい。戸上先生はこう振り返ります。 

 

進路が決まった生徒たちが、社会に出たときにしっかりやっていけるのか。それがずっと気がかりでした。この子たちの力はまだまだ伸びるはずだと思っていたのですが、「どこが伸びるのか」「どう伸ばすのか」は、私たちの感覚でしか捉えられていなかったのです。生徒自身も言葉で理解できて、私たちも言葉で伝えられる—そういう共通の土台がほしいと感じていました。

戸上先生

 

上畠先生も同様の課題意識をもっていました。

 

目の前にいる子どもたちが社会に出ていくことを客観的に考えたとき、一番の心配は「生徒たちの自己理解が十分に進んでいない」ことでした。自分の強みや特性を自覚しないまま社会に出ていくのは、もったいないなと。

上畠先生

 

こうした課題意識が学年団の中で自然と共有されていたことが、今回の取り組みの出発点となりました。



地域に根差した学校だからこそ見えた課題


島田商業高等学校は、志太・榛原(しだ・はいばら)地区における商業教育の拠点校です。地元企業との結び付きが強く、これまで地域に貢献する人材を数多く送り出してきた歴史があります。

一方、上畠先生は地域との深いつながりがもたらす教育上の特徴についても語ります。

 

本校の生徒は、地元意識が非常に高いのです。小・中学校から同じコミュニティの中で育ってきた子が多いので、人間関係がそのまま継続していく傾向があります。それ自体は良いことなのですが、外からの新しい刺激に触れる機会が限られると、自分自身を見つめ直すきっかけが生まれにくい。客観的に自分を捉えるための何か別の手がかりが必要だと感じていました。

上畠先生


実際、「Ai GROW」で生徒の非認知能力の測定結果を学年全体で見たとき、共感・傾聴力の高い生徒が多いという傾向が確認されました。これは同校の教育活動やスクール・ミッションと方向性が一致している証でもありますが、同時に生徒一人ひとりの個性がより多彩に花開く余地があることも示唆していました。

戸上先生は、以前勤務されていた進学校での経験と比較しながら、こう話します。

 

実業高校には、進学校にはないおもしろさと可能性がたくさんあります。地域企業との連携、商業科目での実践的な学び、資格取得。人材を育てる材料がこんなに豊富にある環境はなかなかありません。だからこそ、その可能性をもっと引き出したいという思いがありました。

戸上先生



▲ 地域の企業の方を招いた講演会の様子


▲ 地域の企業の方とディスカッションをする生徒の様子



卒業前の5分間面談が生徒に届けたもの


2025年11月からはじめた「Ai GROW」による非認知能力の測定。その結果を基に、戸上先生はクラス全員と一人ひとり面談を行いました。一人当たりの時間は約5分。そこで交わされた言葉は生徒たちにとって大きな意味をもつものでした。

 

データが出てきたとき、子どもたちはやっぱり楽しみなんですよね。テストとは違って、相互評価から自分の強みを客観的に知るという体験だったので。私自身も、2年間一緒に過ごしてきた中で感じていたことと、データとして出てきたものが一致していて、自分の見立てに確信がもてました。

戸上先生


面談で特に手応えを感じたのは、力をもちながらも自分からは前に出ようとしない生徒に対するアプローチでした。

 

「できるはずなのに手を挙げない」—そういう生徒が何人かいました。データに強みとしてはっきり示されていることで、「こういう力があるのだから、それを生かしていきなさい」と具体的な言葉で伝えることができた。最後に送り出すときの言葉として、「あなたにはちゃんとした強みがあるんだよ」というプレゼントを渡せたのは大きかったと思います。

戸上先生


中には、この春から東京で新生活をスタートさせる生徒もいました。戸上先生は「ここで培った力は、新しい環境でも必ず生きるから」と伝えたといいます。




学年主任が注目した「集団の中の個」


上畠先生は、学年全体を俯瞰る立場から、少し異なる視点でデータを活用しました。

 

私は学年主任としてリスクマネジメントの観点からデータを見ていました。集団の中でうまくなじめていない生徒に対して、社会に送り出す前にどんな働き掛けができるか—そこにデータがあることで、課題をより早く、より的確に把握できるようになりました。

上畠先生


こうしたデータがもっと早い段階から手元にあれば、3年間を通じた支援ができたのではないか。上畠先生はそう感じたといいます。



校内での課題共有が「Ai GROW」の導入を後押し

今回、卒業前の3年生の秋という限られた時間の中で測定と面談を実施できた背景には、学年団としての一体感がありました。

 

学年の先生方の間で、日常的な会話の中から課題意識が自然と共有されていた。「このままでいいのだろうか」という思いをみんながもっていたからこそ、(「Ai GROW」を導入することについて)話がスムーズに進んだと思います。

上畠先生


戸上先生も前任校での経験を基に、非認知能力の可視化に関心をもち続けていたことが、今回のきっかけにつながりました。「感覚」と「データ」の両方をもつことで、生徒への声掛けに確信が生まれ、教員同士の目線合わせにもつながったといいます。


▲ 先生方は定期的に情報交換会を開き課題や成果を積極的に共有



今後の展望—成長の「変化」を捉えるために


2025年度は卒業を控えた時期での単発的な実施でしたが、上畠先生、戸上先生とも「経年での変化を見たい」という思いを共有しています。上畠先生は今後の可能性についてこう語ります。

 

入学時、進路活動が本格化する2年次、そして卒業前—この3つのタイミングで測定できれば、学校の教育活動と生徒の成長がどのようにリンクしているかが見えてくるはずです。特に実業高校にとっては、学力以外の力の伸びを可視化することに大きな意味があると考えています。

上畠先生


また、今回は時間の制約から実施できませんでしたが、保護者との三者面談などで測定結果を共有することの可能性にも期待が寄せられました。
戸上先生は最後にこう締めくくりました。

 

学校にはその学校の役割がある。この地域を支える人材を送り出すという期待に、私たちがどう応えていくか。一人ひとりの生徒の力を客観的に捉え、それを伸ばす手立てを講じること。そのために、「Ai GROW」を活用する意義は大きいと感じています。

戸上先生