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【活用事例】課題を乗り越えながら頑張った探究の成果が明らかに

石川県立七尾高等学校

【活用事例】課題を乗り越えながら頑張った探究の成果が明らかに

中村晃規先生
髙橋玄季先生

課題を乗り越えながら頑張った探究の成果が明らかに

 

本校では「至誠・剛健・敢為」を校訓に掲げ、国際的な視点をもち、ふるさとを愛し、社会に貢献できる人材の育成を目指しています。平成16年にはスーパーサイエンススクール(SSH)の指定を受け、令和4年度には過去4度の指定実績が必要なSSH期「先導的改革型」の指定を受けました。文理の枠を超えた探究活動「融合プロジェクト」を通して「総合知」の創出を図るとともに、学際的協働を主導する科学技術ファシリテーターを育成するシステムの構築を目標としています。

 

SSH指定校として不可欠なのが、推進する事業の客観的な評価です。指定校として事業を推進・拡大してきた19年の間に、評価についてもルーブリックの作成や改定、外部指標の活用など、試行錯誤しながら実践してきました。「Ai GROW」であれば年間何度でも実施でき、事業の成果や課題、事業による生徒の能力の成長をリアルタイムで捉えられることを知り、令和5年度に試験的に導入を開始しました。

 

令和6年1月1日、本校のある能登半島が大地震に見舞われ、私たちの日常は一変しました。幸い、学校に大きな被害はなく被災直後に水の心配があった程度で、さまざまな状況を抱えながらも生徒たちも学校に戻ってくることができました。授業再開直後は今後どうなっていくかも読めない中で探究は一度休止。基礎科目を中心に学習を進めていましたが、教員間で探究をどのように再開すべきかという議論は続けていました。1カ月ほど経った頃、「こんなときだからこそ自分ごととして物事を考えられるのではないか」「震災からの復興について自分たちには何ができるか」という、まさに今だからこそのテーマに取り組んでみるべきだと考え、決して無理はさせないことを絶対条件に探究学習を再開することにしました。この決断を後押ししたのは、自らも被災しながら自分たちでもできることはないかと考えボランティア活動に参加する生徒たちの姿でした。2007年にも能登半島で震度6強の地震がありました。当時の復旧に大いに貢献したのは地元の高校生たちでした。そのようなことも思い出しながら、七尾高校生だからこそできる社会貢献の在り方を考えたとき、本校がこれまで培ってきた探究を利用した取り組みにたどり着きました。

 

テーマは「能登の復旧、復興のためにどうすればよいか」としました。日本全体を見渡せば毎月のように各地で地震があり、巨大地震の発生が懸念されている地域もあります。今回、自分たちが目の当たりにした課題は、必ず、どこかで再び誰かの生活を脅かします。東日本大震災をきっかけに生まれた段ボールハウスのように、災害が発生した際の困りごとを少しでも減らすための解決策を、震災を経験した今だからこそ当事者として考え発信していこうと考えたのです。さらに、各自の課題に落とし込む上で、医療に興味がある生徒は医療の観点から、情報ツールなどに興味がある生徒は最新テクノロジーの活用について考えるなど、それぞれの希望進路とマッチングさせて考えるようアドバイスしました。こうして5月くらいまで探究を進めていたところ、石川県からアクション・プランが発表されました。このアクション・プランには、生徒たちが考えていた解決策をそのまま適用できるケースが多くみられました。そこで自分たちが取り組んできた内容をこのアクション・プランに対する提言としてまとめることをゴールに定め活動を進めました。

 

▲「融合プロジェクト」の発表会の様子

 

探究活動後の「Ai GROW」の結果を震災以前と比較したところ、特に3年生について多くのコンピテンシーが大きく成長していたことに驚かされました。SSHとして重視する「論理的思考」「創造性」「課題設定」はもちろん、「自己効力」「地球市民」が大きく伸長。生徒たちが社会のために考え、行動できるようになってきていること、そして、その達成感を味わえていることが、手探りで進めてきた今年度の探究の最大の成果だと考えています。探究の授業の中では他者とのコミュニケーションや議論の進め方を学び、協働的思考力を高めるファシリテーション講座を実施していますが、「共感・傾聴力」の成長はこのプログラムの効果を示しているのではないかとも感じ、嬉しく思っています。

 

▲ファシリテーション講座に取り組む生徒たち

 

「Ai GROW」の管理画面から抜粋したグラフ。
自分が住む地域のために何ができるか考えられる能力である「地球市民」や「自己効力」をはじめ、
計測したコンピテンシーが1年間で大きく成長していることが分かる。

 

このようなコンピテンシーの成長の背景には、生徒の頑張り、教員のサポートはもちろん、卒業していった昨年度の3年生の影響もあったのではないかと考えています。大学入試の直前に震災に見舞われた彼らでしたが、それぞれが自らの状況を受け入れ、その中でできる準備をして受験に挑み、教員も慌てることなく一人ひとりの頑張りをサポートしていました。逆境に負けず前を向く彼らの姿を間近で見ていたことも、震災とその後の混乱の中で生徒の成長を支えることにつながったのではないかと考えています。

 

3年生の探究活動は夏休み前で終了し、夏休み以降は大学入試に向けた準備を本格化させることになります。大きく成長したコンピテンシーを生かし、それぞれが輝ける進路へと羽ばたいていってもらいたいと思っています。また、前述の通り、志望する進路を見据えながら探究を進めてきた生徒も多く、取り組みの内容だけでなく、「Ai GROW」によって可視化されたコンピテンシーの成長を総合型選抜入試や学校推薦型入試におけるアピールにも活用できるのではないかと期待しています。

 

 

 

 

 

 

リンク:
石川県立七尾高等学校
https://cms1.ishikawa-c.ed.jp/nanaoh/