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【イベントレポート】【教科×探究】実践支援ワークショップin東京学芸大学教職大学院

作成者: IGS株式会社|Mar 27, 2026 9:59:08 AM

 

 

【教科×探究】実践支援ワークショップin東京学芸大学教職大学院

2026年2月2日および2月9日に、東京学芸大学教職大学院にて、【教科×探究】実践支援ワークショップを開催。異なる専門性をもつ先生方が、それぞれのレンズを通して探究を全力で楽しんだ、熱気あふれる100分×2日間の様子をレポートいたします。 

 

ステップ① 探究で育みたい力を「理解」し、発揮したい力を「宣言」

担当教科ごとにグループに分かれてスタートしたワークショップ。まず初めに、先生方には事前に受検いただいた2つのアセスメントツール、非認知能力を可視化する「Ai GROW」と、探究スキルを可視化する「数理探究アセスメント」で測定できる力について改めてご説明しました。

 

▲事前アセスメントや振り返りを通して理解を深める、探究を通して育みたい力 



さらに、「Ai GROW」については結果の振り返り方法を、「数理探究アセスメント」に関しては探究において多くの生徒がつまずきやすい「課題設定力」に焦点を当て、その高め方について確認しました。探究活動の中で「問いを立てること」は最初の重要なステップでありながら、難しさを感じやすい部分です。そこで、どのような視点で問いを立てるとよいのか、どのような思考プロセスが必要なのかを具体例を交えて確認しました。 

 ▲「課題設定力」の高め方を説明する資料の一部 

 

その上で、「今回のワークでは自分はどの力を意識して発揮したいか」をグループ内で宣言してから活動に取り組みました。この宣言は、最後に行うポジティブな相互フィードバックとセットになっています。

参加した先生方からは、「発揮したい力を宣言することで、お互いの理解が深まり、自分では気づかなかった新しい側面を知ることができた」「振り返りのフィードバックの時間は、探究の活動そのものと同じくらい価値があると感じた。実際の授業でも大切にしたい」といった感想が寄せられました。 

 

ステップ②  共通テーマについて「各教科の観点・学習過程」で探究する 

次は、先生方自身が【教科×探究】を全力で体験するパートです。今回も「プラスチックごみを削減するにはどうしたらよいか」をテーマに、中央教育審議会がまとめた答申で示されている各教科の学習過程をベースにしつつ、以下の4つのフェーズを必ず意識して探究に挑戦していただきました。

①課題やテーマの設定
②情報収集の方法の検討(方法を決定したら生成AIでダミーデータを作成)
③考察
④創造・まとめ

 

理科×探究の進め方を説明するシート。各フェーズで行う内容は教科により少しずつ異なる

 

今回初めてグループが作られた「保健体育科」をはじめ、同じテーマでも驚くほど異なる多角的なアプローチが示されました。

  • 保健体育科グループ プラスチックは「現代の公害となり得るか」という問いを立て、過去の「四大公害」と発生源や体内への侵入経路を比較し、プラスチックが肺の奥へ侵入していることや、有害物質を吸着する性質があることなどの類似性を指摘。未知のリスクに対する可能性を提示することで、問題解決の必要性を示すアプローチをとりました。
  • 国語科グループ 国語科は2グループに分かれて実施。1つ目のグループは、分別のルールを知っているのになぜ守らないのかという人間の「心理」に着目。『羅生門』の主人公や日常の小さなルール違反を例に挙げ、「倫理と欲求の対立」を考察しました。 2つ目のグループは、カフェのタンブラー利用の促進をテーマに、消費者にはポスターやアンバサダー起用、企業にはCSR活動としてのプレゼンテーションなど、相手による最適な伝え方とその効果について検証しました。
  • 数学科グループ 小金井市や国分寺市のリユース・リサイクル率の高さと、世界規模で見た時の日本の「焼却処理率」の高さというデータのギャップに着目。日本に焼却が多い理由を分析し、土地の少なさや衛生面の問題、焼却熱の再利用(温水プールなど)といった背景を考察。1つのグラフであっても、読み取り方や目的によって解釈が大きく変わることを実感し、統計データを議論の土台として活用する重要性を示しました。
  • 理科グループ 環境に優しい「生分解性プラスチック」がなぜ広く普及していないのかという疑問から、「性質上に何らかの欠点があるのではないか」という仮説を立案。通常のプラスチックと耐熱性や耐酸・アルカリ性を比較する実験を計画し、生分解性プラスチックは分解されやすい分、耐久性や耐薬品性に弱点があることを指摘。全てを置き換えるのではなく、用途に応じた使い分けの必要性を提示しました。
  • 社会科グループ 駅などに放置されるタピオカ容器のポイ捨て問題をテーマにしつつ、単にリサイクルボックスを置くだけでは心理上うまく機能しない可能性を指摘。法律が違反行為を制限する仕組みであるのに対し、マイナポイントのように「正しい行動をとることで利益(インセンティブ)が得られる」システムに着目し、容器のQRコードを読み込むとポイント還元されるような仕組み作りを提案しました。 

このパートに関するアンケートには「同じテーマでも、教科のレンズを通すとここまでアプローチが異なるのかと思った」「違う教科の視点にも自分の担当教科にも応用できる考え方や要素が多く、学びになった」など、教科の専門性がもつおもしろさを再発見する声が数多く寄せられました。

 ▲各グループでのディスカッションの様子 

 

先生自身が「学ぶ側」に立ち返って見えた、探究のリアル 

ワークショップ終了後のアンケートからは、先生方自身が「児童・生徒の立場」となって探究を体験したからこそ得られた深い気づきが数多く寄せられました。

「探究って楽しいと思えた」「1つのテーマに沿って探究していくプロセスを実感でき、学びが多かった」というワクワクする声。一方で、「課題設定が難しかった」「そもそも仮説とは何なのか、立ち止まって考えるきっかけになった」という、学習者としての率直な戸惑いの声もありました。こうした「楽しさ」と「難しさ」の両方を体感したことにより、「生徒がどこでつまずくのかが具体的にイメージできた」「問いや仮説の支援をより丁寧に設計したい」といった、授業改善への視点が生まれていました。

この経験は、「どのように教えるか」から「どのように学びが起きるか」へと、先生方の視点を転換する契機となりました。その変化は、生徒の「学び方」そのものを変えていくはずです。 

「教師自身が探究するという視点は必要な指導観。まずはその意識改革から始めたい」ある先生のこの言葉に、本ワークショップの意義が凝縮されています。

先生自身が「探究者」として学び続けること。その姿こそが、生徒の探究を最も力強く支えるのだと、確かな手応えを感じた2日間でした。