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【イベントレポート】【教科×探究】実践支援ワークショップin東京

作成者: IGS株式会社|Jan 30, 2026 9:22:02 AM

 

【教科×探究】実践支援ワークショップin東京 レポート

2025年12月23日、聖徳学園中学・高等学校を会場に【教科×探究】実践支援ワークショップを開催。

「授業作りは高度にクリエイティブなものづくり」―会場校の木村剛隆先生の終了後の言葉の通り、熱い時間が流れる一日となりました。

異なる専門性をもつ先生方が、それぞれのレンズを通して探究を全力で楽しむ前半パート、その学びと熱量を「明日からの授業」へと落とし込む後半パート。クリエイティブな熱気に包まれた当日の様子をレポートいたします。

ステップ① 探究で育みたい力を「理解」し、発揮したい力を「宣言」

担当教科ごとにグループに分かれてスタートしたワークショップ。まず初めに、事前に受検した非認知能力を可視化する「Ai GROW」と探究スキルを可視化する「数理探究アセスメント」について改めて確認しながら、探究によって育むことが期待できる資質・能力を整理。続けて「今日のワークショップでは、どんな資質・能力を意識して取り組みたいか?」を決め、グループのメンバーに対して「宣言」していただきました。この「宣言」は、ワークショップ終了後に行う「ポジティブな相互フィードバック」とセット。 グループのメンバーに「今日はこの力を意識する」と最初に共有しておくことで、明確な意識と目的をもって探究に取り組むことができます。また、振り返りの際、「確かにあの場面で力が発揮されていた」と、具体的な行動に基づいたポジティブなフィードバックを互いに共有することができ、自分の振る舞いが他者にどう映ったかを客観的に知ることもできるのです。「意識して、実践して、認められる」。「生徒の力を育む手法」を実体験を通して学び、「このプロセスはおもしろい」「早速、自分の授業でも真似したい!」という声が多く上がりました。

 

ステップ② 先生自身が「正解のない問い」を全力で楽しむ

次は、先生方自身が【教科×探究】を全力で体験するパートです。今回も「プラスチックごみを削減するにはどうしたらよいか」をテーマに、中央教育審議会がまとめた答申で示されている各教科の学習過程をベースにしつつ、以下の4つのフェーズを必ず意識して探究に挑戦していただきました。

①課題やテーマの設定
②情報収集の方法の検討(方法を決定したら生成AIでダミーデータを作成)
③考察
④創造・まとめ

理科×探究の進め方を説明するシート。各フェーズで行う内容は教科により少しずつ異なる

 

• 数学科グループ
「レジ袋の価格を上げれば使用量は減るのか?」という仮説から、消費者が辞退を選択する「損益分岐点(トリガー)」となる価格帯を算出する数値的アプローチに取り組んだ。

• 理科グループ
「本当に環境に悪いのは何?」という問いから科学的に分析。レジ袋よりも食品トレーなどの割合が高いことや、問題の本質は「飛散による海洋汚染」であるとし、捨て方やリサイクルシステムの実効性に焦点を当てた。

• 国語科グループ
衣服の合成繊維から出るマイクロプラスチックに着目。技術的な解決ではなく、家庭内で「洗濯どうする?」という会話を生むコミュニケーション・デザインによって、意識と行動を変える手法を提案した。

• 社会科グループ
「分別を文化にする」をテーマに、ごみ回収量を可視化してフィードバックするシステムを考案。個人の小さな行動が数値化されることで自己効力感を高め、社会参画意識を醸成する仕組みをデザインした。

• 英語科グループ
日本の廃プラスチック輸出問題に焦点を当て、実態を知らない輸出相手国やグローバル企業に対し、英語でメッセージを発信し協力を仰ぐアクションプランを作成。「学ぶための英語」から「社会を変えるツールとしての英語」への転換を示した。

ここまでのパートに関するアンケートには「同じテーマでも、教科のレンズを通すとここまでアプローチが異なるのかと思った」「違う教科の視点にも自分の担当教科にも応用できる考え方や要素が多く、学びになった」など、教科の専門性がもつおもしろさを再発見する声が数多く寄せられました。

社会科チームの発表に聞き入る先生方

先生方が目を輝かせて議論に没頭する姿は、まさに「探究」そのもの。この姿こそが、この後の授業づくりパートへの熱量へとつながっていきました。

 

教科横断的な探究がつながった瞬間ステップ③ 教科の専門性をいかした「ワクワクする探究」のデザイン

いよいよ「明日からの授業」へと昇華させるパートへ。生徒が学習内容を「自分ごと」として捉え、夢中になって試行錯誤できる授業デザインに挑戦しました。

▲ホワイトボードを囲んで活発な議論を交わす様子

• 数学科グループ生徒にとって身近な「遅刻者数」をテーマに設定。「雨量」「気温」「家からの距離」など、生徒「どんな要素が遅刻と関係があるのか」仮説を立て、データを収集・分析する。計算だけでなく、相関関係と因果関係の違いを議論し、生活指導的な気づきも促す。

• 理科グループ
「実験の意義」や「失敗からの学び」を体感させるため、ペーパーブリッジや水風船を使ったエッグドロップなどを実施。「一発で成功」を目指すのではなく、失敗(エラー)を繰り返しながら最適解を探すプロセスこそが、理科や探究の学びであることを伝える。

• 国語科グループ
既存の広告を分析し、文字種や修辞法の効果を学んだ後、教室を飛び出して学校内の「緑の椅子」などを撮影。それを魅力的に見せるキャッチコピーを創作。短い言葉の中に意図を込め、他者に伝える活動を通して、言葉のもつ力と社会との接点を学ぶ。

• 社会科グループ
導入で画像生成AIに「民主主義」を描かせ、そこに潜むバイアス(男性が多い、特定の国旗など)を批判的に分析。その後、歴史・公民・地理の視点からリサーチを行い、最終的に情報を削ぎ落として本質を表す「民主主義のシンボルマーク」をデザインする。

• 英語科グループ
「なぜ英語を学ぶのか?」という根源的な問いに対し、英語を使って社会を変えた事例(国連でのスピーチなど)を調査。最終的に「英語 × 自分の好きなもの/将来の夢」で何ができるかをプレゼンし、「やらされる勉強」から「自分を拡張するツール」へとマインドセットを変容させる。


他教科から学ぶヒントが担当教科の探究を深める

 

各教科グループの発表後のフィードバックでは、「数学の調査の方法、データの扱い方はどんな探究でも基本になるものだと改めて感じた」「社会の授業で株式学習ゲームを扱っているが、企業のキャッチコピー作成を国語でやっているとわかれば、連携してできることが広がるなと思った」「生徒から何のために数学を勉強するのかと言われることがある。『なぜ学ぶのか』を生徒自身がまず定義する英語科の案はぜひ参考にしたい」といった、教科の枠を超えた共感が次々と生まれました。ワークショップの最後、会場を包んでいたのは「他教科のアプローチには、自分の教科にも応用できるヒントがあふれている」という発見と感動でした。

「教育はものづくり」 先生方が目を輝かせながら授業を作る姿は、まさにその言葉を体現していました。これからの学校教育が「探究」によってさらに豊かになる可能性を強く感じた一日となりました。

 

■編集後記:知識があるから、探究はおもしろくなる ─ 教科と探究をつなぐ意義の再確認

ワークショップ終了後、会場をご提供くださった聖徳学園中学・高等学校の木村剛隆先生と当日の様子を振り返りながらお話しする中で改めて浮かび上がってきたのは、「知識(インプット)があるからこそ、探究(アウトプット)は深まる」ということでした。

前半の【教科×探究】の実践では、同じ「プラスチックごみ削減」というテーマでも、教科によって問いの立て方や考え方が大きく異なり、科学的根拠、社会的背景、データの扱い方、伝え方の工夫などに関するアイデアが議論の中で次々に生まれていきました。知識が豊富で専門性のある先生方が本気で向き合うことで、考察が積み重なり、アイデアが磨かれ、提案が洗練されていく―そんな瞬間が随所に現れていました。

木村先生はこのワークショップを通して、「探究が深まりにくい原因の一つは、議論するための“知識の種”が不足していることかもしれない」と感じたといいます。探究を学校で広げていく際にぶつかりやすい「考える材料がない」「議論が浅い」「アウトプットが表層で止まる」といった課題に対し、教科で培った知識やものの見方を探究につなげる設計が、一つの鍵になるのではないか―。今回のワークショップは、その可能性を強く実感する機会となりました。

知識があるから探究はおもしろい。そして、その知識を探究につなぐ工夫があるからこそ、学びはさらに深く、豊かになる。今回も教科と探究をつなぐ意義を改めて確かめる一日となりました。