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【イベントレポート】IGS15周年企画「AI社会から逆算して考える評価とコンピテンシー」(2)

作成者: IGS株式会社|Oct 14, 2025 1:11:47 AM

 

AI時代を生き抜く「学び」と「働き方」の再定義 ― 佐藤勝彦氏が語る独学術と未来への挑戦




2025年8月18日、東京の聖徳学園中学校・高等学校を会場に行った先生向けイベント「AI社会から逆算して考える評価とコンピテンシー」。弊社の創業15周年を記念した本イベントでは、基調講演として生成AIをビジネスの世界で最大限に活用すべく、日々新しい知見を取り入れながら自身の価値軸をアップデートし続けている、佐藤勝彦氏に講演いただきました。

本記事では、第1部 佐藤勝彦氏の基調講演の内容をレポートいたします。

詳細な内容は、現在、アーカイブ動画の視聴希望も承っております。詳細をご覧になりたい先生は、ぜひアーカイブ動画の視聴希望をお寄せください。

■講師紹介

佐藤勝彦氏(TANREN株式会社 代表取締役CEO)プロフィール
生成AIエバンジェリスト 営業・販売員の育成ソリューション「TANREN」を提供。料理人からキャリアをスタートし、非エンジニア・英語力ゼロながら独学で生成AIを徹底的に使いこなし、自社の経営とプロダクト開発を加速させる。その実践知がSam Altman氏、OpenAI社の目にとまり、OpenAI社の日本イベントで日本のベンチャー企業として唯一事例紹介される。現在は全国の大手企業・中堅企業を中心に、AIを「使う側」から「創る側」への変革を促す講演・研修を精力的に行い、AI時代の新たな働き方と学び方を提唱している。


挫折から立ち上がる力とAIとの出会い

佐藤氏の講演は、挫折と挑戦の物語から始まりました。

自身は「決して地頭が良かったわけではなく、卒業した高校の偏差値は40程度。親からは手に職を付けなさいと勧められ、卒業後は調理師の道を歩み始めた」と言います。しかし、その調理師の仕事は1年程で辞め、その後も転職を繰り返し、何度も心が折れる経験を重ねてきたと佐藤氏は語ります。

その後「恩師」との出会いをきっかけに携帯電話販売の世界に飛び込み、営業力を磨いたものの、自身の成果が大手資本の仕組みに依存している現実を痛感し、「自分の本当の力とは何か」という問いに直面します。しかし、その問いはやがて佐藤氏を新たな道へと導きます。

2014年、佐藤氏は「TANREN株式会社」を起業しました。そこからしばらく経った2023年3月15日に出会ったGPT-4は、まさに人生を変える存在となりました。佐藤氏は「AIは万人に等しくチャンスをもたらす」と強調し、これまで「何者でもなかった」自分が、AIによって新たな力となると断言します。

超独学術の三本柱 ― 超具体化 → 超抽象化 → 超構造化


なぜ「AI」の活用が何者でもない人にチャンスをもたらすのか。佐藤氏は、10月17日に全国で出版される書籍「AI独学 超大全」の中で、「AI独学術」という概念でそれを説明されました。
佐藤氏は「ピラミッドストラクチャー」に基づき、学びの質を高める3つのメソッドを提示しました。

第1は「超具体化」。AIを用いて論文や一次情報を読み解き、ファクトを積み重ねながら理解を深める手法です。佐藤氏は「勉強が苦手だった自分でも、AIの助けがあればスタンフォード大学の最新論文すら読み解ける」と熱弁し、実際に日々、そうした情報を収集していると言います。

第2は「超抽象化」。具体的な事例から本質的な概念へと飛躍する力を、AIとの対話を通じて磨けると指摘します。

第3は「超構造化」。情報を整理し再構築することで、複雑な知識を分かりやすく伝えるスキルが身に付くのです。

佐藤氏はこの三本柱を「AI時代を生き抜くための必須スキル」と位置付け、この3つを往還していくことで、これからは「熱意と情熱を持って挑めば、誰もが独学で、相当な知識やスキルを手にすることができる時代になった」と言います。

AI秘書との対話が示唆する新しい教育の姿

続いて佐藤氏は、参加者の先生方と連携し、実際に佐藤氏が開発したAI秘書「桜木美佳」との対話のデモンストレーションを披露しました。

会場から提起された「勉強が苦手な生徒への接し方」の相談場面では、AI秘書が「小さな成功体験の積み重ね」や「具体的なヒントの提示」といった実践的な助言を行いました。

続けて佐藤氏は、「AIが教師の個性やこだわりを変数として取り込み、パーソナライズされた指導を可能にする」ことでさらに有用なサポーターになることを説明。実際に、AI秘書に追加の考え方を提示していきます。ここで先の「抽象化」や「構造化」を促す指示を佐藤氏が行うことで、AI秘書から「より汎用的な教育シーンにも応用できる共通的な考え方」が示される様子を実演しました。

これにより、AIは単なるツールではなく「教育の伴走者」として機能する可能性を示唆しました。佐藤氏は「AIに文脈を流し込み、教師のユニークさを加えることで、まるでバディのような存在に変わる」と語り、教員がAIを活用する際の一つのユースケースとなり得ることを示しました。

AIリーダブル時代の学習資料と知識管理

佐藤氏はさらに、「AIリーダブル」な資料作成の重要性を説きました。従来のPowerPointやExcelのような人間にとって読みやすい資料ではなく、「テキストファースト」の資料を整備することが、AI時代の学習や業務効率化に直結するという主張です。

上記の画像は、佐藤氏が自身の講演を手元で録画しておき、そのデータをAIに処理させることで自動的にマインドマップとして書き起こされたものです。これは、音声のデータを「文字起こし」したテキストデータ、つまり「AIリーダブル」な情報源があれば、こうした分析や整理をAIが瞬時に処理するということの価値を端的に示しています。これは「Mapify」というツールを使い、1回のプロンプトで即座に生成されたものだというから驚きです。

さらに佐藤氏は、「Google Notebook LM」や「GenSpark」といった最新のツールを、膨大な情報を束ねて再構築し、誰もが「自分に最適化された知識」にアクセスできる未来を引き寄せるツールと形容しました。佐藤氏は「すべての資料をテキスト化して管理することが、学びと働き方を革新する鍵だ」と力を込めました。

「何者でもない人」が「何者か」になるために

講演の締めくくりで佐藤氏は、AI時代を生きる上での心構えを語りました。

AIは「60点を80点に引き上げる力」をもち、誰もが一定の水準に到達できる社会をつくり出しています。しかし、その能力をどう使うかは人間次第です。ただ考えもないままに利用するだけでは堕落を招きますが、AIとの対話を通じて問いを立て、理路整然と答えを導く力を養えば、大きな飛躍が可能となります。

佐藤氏自身が偏差値40から起業家へと成長した軌跡は、「何者でもない人間がAIを武器にすれば何者かになれる」ことの証明でした。最後に同氏は、「超具体化・超抽象化・超構造化」という三つの柱を胸に刻み、すべてのデータをテキスト化してAIと共に歩むことこそが未来を切り拓く道だ」と強調し、講演を締めくくりました。

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