教科の学びを探究へとつなげる実践力を育む本プログラム。
2025年12月13日に同志社中学校を会場に行った京都開催は、3時間の短縮版で実施しました。
共通のテーマに対し、教科ごとの視点から問いを立て、考え、語ることを大切にした会。教科の中で考え尽くしたからこそ、教科を越えた対話が自然と立ち上がっていきました。
今回のテーマは、身近な社会問題である「プラスチックごみを削減するには」。
参加された先生方は教科ごとに分かれ、中央教育審議会がまとめた答申で示されている各教科の学習過程をベースにしつつも、以下の4つのフェーズは共通として探究に挑戦しました。
①課題やテーマの設定
②情報収集の方法の検討(方法を決定したら生成AIでダミーデータを作成)
③考察
④創造・まとめ
▲「理科×探究」の進め方を説明するシート。各フェーズで行う内容は教科により少しずつ異なる。
社会科の先生方のチームは、仕組みとスケールでプラスチック使用の在り方を考える探究に挑戦。使い捨てペンに着目し、使用量や人口規模で見たときのインパクトを試算。入学や入社時に長く使えるペンの配布、自治体への導入、回収や交換を含めたサブスクリプションの仕組みなど、社会全体で小さな取り組みを制度や仕組みへと変えていく案を提示されました。終盤では、削減量をどう伝えると人を動かせるか、という視点から、ペットボトル本数への換算など、施策を実現にこぎつけるための方法についても議論されました。
理科の先生方のチームはプラスチックの再利用に注目。再利用回数による削減効果、他素材(チョーク粉など)を混ぜた場合の強度や性質について議論を重ねました。「どの素材なら再利用できるか」「混ぜすぎると性質が変わるのはなぜか」といった問いを重ねることで深まる探究。先生方の「実験したくなる問いがたくさん出てきた」という声が印象的でした。
人数の関係で二つに分かれた国語科チーム。1チーム目は、ゴミとして捨てたはずのプラスチックが海を巡り、魚を通じて再び自分たちの前に現れるという循環をホラー映画の構造になぞらえた動画表現に落とし込みました。「事実を並べるだけでは人は動かない、感情を揺さぶることで初めて伝わる」という議論から、「どう伝えるか」に主眼を置き、プラスチックを「逃げても戻ってくる怖い存在」として描きました。
もう一つの国語チームは、環境問題そのものよりも先に「言葉とは何か」「伝えるとはどういうことか」という根本的な問いに、時間をかけて向き合いました。正解がないからこそ、簡単にはまとまらない議論からこのチームが生み出したのは、「言葉は感覚から生まれる」という考え方を出発点にした、海洋プラスチック問題を体験を通して感じる仕組み。触覚、痛覚を通じて海洋生物の視点を体験し、問題を自分の感覚としてどうとらえるか、そしてそれをどう言葉に変換するかを考えさせる体験型施設をチームの解として導き出しました。
そして、数学のチームでは、削減の方法そのものではなく、「私たちはいつまで魚を食べられるのか?」という誰もが興味を惹かれる問題について考え、伝えるというテーマに取り組みました。海洋プラスチックの増加量、魚が取り込むマイクロプラスチック量などからこのペースが続いたら何年後にどんな影響が出るのかということについて、計算から推量しました。
▲熱心に議論を交わす先生方
数学チームは同時に、探究を通して感じた「数学は問題を明らかにすることまではできるが、それをどう伝え、どう動かすかということは別の力が必要になる」というジレンマを全体に共有。これを受け、国語チームからは「数学で明らかになった事実を、国語の力でより効果的に伝えることができるのではないか、そのような教科をまたいだ探究を考えてみても面白いのでは」というコメントがありました。
先生方自身が「教科で探究するとはどういうことか」を全力で体感し、その可能性や限界も感じ、その先にある教科横断の可能性に触れた今回のワークショップは、今後の授業づくりや校内での探究の広がりにつながる、確かな一歩となりました。この時間で生まれた問いや手応えは、先生方がそれぞれの教室に戻った後も、探究を考え続けるための手掛かりとして残っていくはずです。
▲教科ごとに議論の結果を発表する様子
今回のワークショップは、弊社のアセスメントツール「Ai GROW」を活用する関西の学校の先生が中心となり、勤務校の先生方や、日頃から交流のある他校の先生方に声を掛けてくださったことから実現しました。午後に別の探究イベントが予定されているという限られた時間の中でも最後まで熱心に取り組まれ、この時間そのものを楽しんでくださっている様子が印象的でした。
終了後には、「自分が学習者として探究を体験できたのが新鮮で楽しかった」「他校の先生と自分の教科の探究について話し合い、情報共有できたことがとても良かった」「教科ごとの視点で探究をするイメージが掴めた」「探究的な学びだけでなく、教科横断的な学びについてもヒントを得られた」などの感想が寄せられました。
教科×探究を「まずやってみる」ことの価値を、改めて実感する一日となりました。ここからどんな実践が生まれていくのか、とても楽しみです。