竹澤陽介先生
本校では、全コース共通の目標として「3+1の力」の育成を掲げています。具体的には「考え行動する力」「対話する力」「挑戦する力」という3つの外向きの力と、それらを支える「自らを律する力」という内向きの力です。現代の子どもたちは、SNSの普及やコロナ禍を経て、失敗を恐れ、無難な選択にとどまる傾向が見受けられます。だからこそ、本校の探究プログラムでは、試行錯誤を繰り返せる「挑戦する力」の育成をもっとも重視しています。探究は何度でも失敗できる場です。失敗を許容し、そこから学びを得る経験を積み重ねることで、変化の激しい時代においても自らの経験を基に判断し、たくましく歩んでいける生徒を育てたいと考えています。
設計において特に大切にしているのは、徹底した「対話」と「外部との接続」です。生徒が自分の興味・関心ととことん向き合う時間を確保したうえで、一人の思考に閉じこもるのではなく、多様な相手との対話を通して発想の転換や深い自省を促します。そのため、校内で完結させることなく、外部支援者や他校との交流を積極的に取り入れています。また、「生徒が変われば教員が変わる」という信念の下、教員に無理強いをせず、探究支援教員の配置や定期的な研修を通して、教員自身の心理的安全性を守ることも、持続可能な設計の要としています。
桜美林大学が運営するキャリア支援プログラム「ディスカバ!」の事務局の方々や、株式会社JTB、各大学研究室の方々をはじめとした外部支援者やツールの導入により、校内の教員だけでなく探究メンターや生徒同士の「壁打ち」が日常化しました。これにより、生徒たちの間で探究が共通の話題となり、自ら企業や専門家にコンタクトを取るなど、主体的に自走する姿が目立つようになりました。昨年度は、一人の生徒が複数の全国コンテストに応募し受賞を果たすなど、周囲を巻き込みながら探究を深める好事例も生まれています。こうした生徒の変容は教員側にも大きな影響を与えています。ある担任は、クラスとは異なる生徒のいきいきとした姿に驚き、「生徒への見方が変わった」と探究に前のめりになりました。また、設計の工夫により、探究に苦手意識をもつ教員も「指導者」ではなく「アドバイザー」として生徒との対話に専念できるようになりました。さらに、併設短大や他大学との連携ゼミでは、探究を通して進路意識が早期に芽生え、高2から主体的に動く生徒が増えるなど、確かなキャリア形成の土台となっています。
▲高校1年生の生徒が、8カ月間の探究の成果を発表する様子(写真上)。商品を販売するブースでは、地元企業や道の駅などと連携し、商品販売にも挑戦(写真下)
探究を加速させる鍵は、クラスや学校という「壁」を越える仕掛けを作ることです。多様な大人や他校の生徒との交流の機会を増やすことで、生徒は自走し始めます。外部支援やツールをうまく活用しながらわれわれ教員は「教え手」ではなく「対話の相手」に徹する。そのうえで生徒が自ら選択し、失敗する経験を温かく見守る。失敗こそが、次の選択肢を選ぶ確かな根拠となるはずです。また、組織を動かすには、すべての生徒が探究に励む姿を全教員で共有する場をもつこと。これも非常に有効です。本校では1,600名規模の「探究フェスティバル」を開催することで、教員間の目線が合い、組織的な動きが始まりました。まずは大規模なイベントとして、全生徒が発表し、外部の視点が混ざり合う場を設けてみてはいかがでしょうか。その熱量が、生徒と教員の双方を大きく変えていくはずです。
昭和学院中学校・高等学校
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※内容はすべて2026年5月当時の情報です。