上崎雅美先生
本校は、神奈川県に初めて設立された県立中等教育学校として2009年度に開校しました。「科学・論理的思考力」「表現コミュニケーション力」「社会生活実践力」を柱に、次世代を担うリーダーの資質を探究的に培う教育活動を展開しています。
本校では、探究的な学びを通して「他者と協働できる力」を育むことを大切にしています。生徒は「自己の在り方生き方」をじっくりと見つめ直しながら、仲間とともに課題に挑み、困難を乗り越える経験を積み重ねます。またその過程で、たとえ逆境にあっても前向きに乗り越える力=レジリエンスを培っていきます。
探究の中で大切にしているのは「しなやかさ」です。自らの考えに固執せず、他者の意見を柔軟に取り入れながら、納得解や最適解を導き出す。そのようにして、自ら学びを深め続ける「しなやかな生徒」の育成を目指しています。また、探究の成果だけでなく、過程を大切にし、外部の方々に途中経過を発信することも奨励しています。外からの意見や助言を受けとめ、思考を見直すことで、学びがより豊かに広がっていくと考えています。
▲4年次の公共の授業の様子。普段の授業でもグループでの活動を多く取り入れている。
本校の後期課程では、5年前からグループ探究を導入しています。原則3名1組で、探究テーマが近い友人と協力し合いながら活動を進めていきます。大学生顔負けの目を引く成果を目標にするのではなく、また、探究コンテストでの受賞を狙うのでもありません。大切にしているのは結果よりも過程であり、仲間と協働し試行錯誤を重ねる探究のプロセスを体験することです。
▲総合的な探究の時間の生徒の様子。原則3名でグループを作り、話し合う。
本校の探究活動は、4年生(高1)の段階で「探究」と「協働学習」の作法を学ぶことから始まります。連携校である産業能率大学の協力を得て「協働的学習者プログラム」を体験し、また教授による探究講演会を実施することで、探究の基盤を整えています。その後はグループに分かれて探究を進めますが、そもそもの問いがあいまいなままでは議論が深まらず、行き詰まってしまいます。そこで本校では、生成AIを活用した支援システムの構築を進めています。生徒が考察した内容を生成AIに伝えることで、改善点や欠けている視点、次のアプローチ方法などを助言してもらう仕組みであり、AIGIS(AI-Navigated Guide for Inquiry Study Sagamihara Secondary School)と名付けました。これにより生成AIを「静かな第4のグループメンバー」と位置付け、生徒の白熱する議論を客観視する役割も期待しています。
▲相模原地区探究発表会に参加した生徒のポスターセッションの様子。会場である東京家政学院大学の教授陣からアドバイスを直接受けられる貴重な機会でもある。
AI活用も単に知識を得るためではなく、相談相手として位置付けることが現代の学びにつながります。探究は短期的な結果や大学受験への直接的な結び付けを目的とせず、生徒が「自己の在り方生き方」を見つめる時間としてこそ意義があります。生徒がより良く生きるための探究であることを大切にしていきましょう。
神奈川県立相模原中等教育学校
https://www.pen-kanagawa.ed.jp/sagamihara-chuto-ss/