教育界のフロントランナーインタビュー・コラム

【特別企画】テクノロジーで変わる教育の未来

作成者: Ai GROW 運営事務局|Sep 14, 2023 7:40:48 AM

「Chat GPT」が切りひらくAI時代に求められる付加価値とは

Institution for a Global Society株式会社
代表取締役 福原正大

 

2022年末に登場し、空前のブームとなっている「Chat GPT」。利用されている先生も多くいらっしゃるかもしれません。「Chat GPT」は瞬く間にユーザー1億人を達成。先日、生みの親であるOpen AIのサム・アルトマンCEOが来日し慶應義塾大学で講演を行った際の学生枠はわずか2秒で満席となりました。世界を本質的に変えるサービスとして、「Chat GPT」の注目度はますます高まるばかりです。

 

私は大学で統計学を教えていますが、期末試験の問題を試しに「Chat GPT」に解かせてみたことがあります。学生たちの平均点は40点程度でしたが、「Chat GPT」は90点程度の回答をかなりのスピードで返してきます。また、「Chat GPT」はコードを書くことも、ゲームを作ることもでき、すでに多くの人間の認知能力を超える存在であり、しかもこれは、現時点での能力にすぎません。多くの人が時間をかけて築き上げてきたことを、比較的容易に、誰でもできる時代がやってきたということです。

 

私は最近、学生たちに問題を出す際に「Chat GPT」の回答も一緒に提示し、それを超える付加価値のある回答を提出するように求めています。「Chat GPT」と同じレベルでしか回答できないのでは意味がないからです。現代の子どもたち、生徒たちが生きる未来には、かなりの部分がAIに置き換わることは確実でしょう。そのなかでどのような付加価値を提供できるか、ということを常に考えていかなければなりません。

 

車は「移動」という点においては人間の脚よりはるかに優れた存在ですが、車より速く走ろうとトレーニングする人はいませんよね。「Chat GPT」においても同様です。前述のような時代が必ずやって来るということを踏まえ、「Chat GPT」をはじめとするAIにはない強みを手に入れ、AIにはできないところを目指せばよいのです。

 

では、具体的に何を伸ばしどこを目指すべきか。私は、コンピテンシーだと考えています。重要なのは、身体や五感を使うこと。状況に応じて課題を設定し、交渉し、創造し、必要があれば対応を変える力。そういったことを実現するためのコンピテンシーとその手前にある各個人の気質の存在を知ったうえで、コンピテンシーを伸ばすための教育を行うことの価値が、これから圧倒的に高まっていくことでしょう。

 

幸いなことに、このコンピテンシーは開発できる能力、つまり、いくらでも伸ばすことのできる能力です。そして、それらの能力が日頃の言動や行動のなかに表れているかをしっかりと確認するために自己評価だけではなく360度評価を行い、生徒にフィードバックすることが特に重要です。フィードバックの際、言葉だけではなく数値化して成長を可視化することで、「君たちはこんなにすごいんだよ」と実感させ、自信をもたせることができます。

 

また、「Chat GPT」が登場し誰もが一定の文章を簡単に書けるようになった今、ただの言葉の羅列がもつ価値は急速に低下しています。総合型選抜入試や企業の入社試験などでも、それまでの学びや経験を通してどのような能力を身に付け、伸ばしてきたのかをデータでしっかりと示すことの重要性は、ますます高まっていくでしょう。生徒のコンピテンシーを定量化するアセスメント・ツール「Ai GROW」は、まさにここに資することのできるサービスです。

 

日々さまざまな業務に追われるなか、新しい物事に対応する時間がなかなか取れないというのが実情かと思います。そのような作業に追われる部分、時間がかかる部分にこそできる限り「Chat GPT」や「Ai GROW」などのツールを活用して効率化を図り、生まれた時間を生徒たちと向き合い、人間力を磨くことに費やす。このスタイルが今後ますます重要になっていくと感じています。そして、社会で今後求められるコンピテンシーと向き合う姿勢、日頃の先生方のご尽力によって伸ばせた生徒のコンピテンシーの定量化は、学校としての大きな強みとなっていくのではないでしょうか。