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【セミナーレポート】第1回「Ai GROW」活用勉強会2022:「Ai GROW」の効果的な活用に向けた計画と実践

作成者: Ai GROW 運営事務局|Sep 12, 2022 3:27:04 AM

 

2022年8月25日に「Ai GROW」ご採用校の先生向けオンラインセミナーを開催。「Ai GROW」導入から3年目を迎えた追手門学院大手前中・高等学校の土谷啓介先生に講師としてご登壇いただき、「Ai GROW」の活用をどのようにステップアップさせていったのか、具体的にお話しいただきました。

 

【講師】

土谷啓介先生(追手門学院大手前中・高等学校 教諭)

 

追手門学院大手前中・高等学校は、2020年に創立70周年を迎えた、大阪の中心部にある男女共学の中高一貫教育校です。根拠に基づくコンピテンシー・ベースの教育の推進、そして、定期考査の点数だけではない多角的・多面的な評価を実現するため、2020年度に「Ai GROW」を導入し、現在、3年目になります。

本校では、追手門学院の教育理念「独立自彊・社会有為」に基づいた学校コンピテンシーを3年前に作成。これを生徒たちにも共有し、段階的かつ効果的に伸ばしていくために、コンピテンシー・ベースの教育に取り組んでいます。もう一つの大きな特長が、毎日、放課後に実施し、その日や1週間の学びの振り返りや学びの記録を行う「追手門モジュール」という時間です。学びの振り返りの精度向上につながるなど、この時間にも「Ai GROW」の受検結果は生かされています。

私が所属する学習推進部は、生徒の学びに関わる全般の企画立案・運営を行う部署です。第一志望の進路実現に向け、生徒のキャリア発達を促進し、生徒の視野および可能性を限りなく広げることを目指しています。その業務は、教員の指導力向上を目的とした校内研修の企画・実施、探究活動のカリキュラム・マネジメント、国際教育の企画・推進、ICTの管理・運用というように多岐にわたり、これらの一環として「Ai GROW」の活用も担っています。

 

「Ai GROW」活用方法を模索した導入1年目~2年目

教員の経験則のみに頼らない根拠に基づくコンピテンシー・ベースの教育推進、そして多角的な評価実現のため2020年度に初めて導入した「Ai GROW」でしたが、初年度は深い分析を行うまでにはいたりませんでした。

導入2年目は運用計画の見直しを図り、各学期1回ずつ、受検と受検結果を基にした面談、分析の時期を決め、年間計画を学校全体で共有しました。また、受検結果のさらなる活用に向け、コンピテンシーの計測結果と定期考査の成績との相関分析を行った他、各学年で気質診断とコンピテンシーの計測結果による分析を行いました。

コンピテンシーと学力の相関分析を行った上で各担任から話を聞いてみると、強い相関が出ているクラスは、日ごろから自分のコンピテンシーを発揮しながら、計画を立てて勉強する生徒が多いということが分かりました。また、負の相関が出ているクラスは、いわゆる一夜漬けのような学習習慣の生徒が多いということも分かりました。今まで感覚的に捉えていたことがデータとして表れ、多くの教員がコンピテンシーを意識するようになり、職員室内の共通言語が増えただけでなく、それまでとは違う視点で生徒を見る教員が増えたように思います。

2年目の取り組みでは、良かった点もありましたが、課題も見つかりました。相関関係を見てみたものの、「その後どうするか」というところまで展開できなかったこと、大切な要素である教員の経験則を生かせず、「Ai GROW」の結果のみに注目した分析や面談が行われてしまっていたこと、そして、箱ひげ図の見方が分からず、深い分析や議論にならなかったことです。そこで、3年目となる2022年度は、多くの教員がクラスや個人の分析を行いやすいデータの作成、そして「Ai GROW」の結果と教員の経験則を掛け合わせた分析の実現を目指し、運用計画のさらなるブラッシュアップを行うことにしました。

 

「Ai GROW」のさらなる活用を目指した3年目の取り組み

2年目の課題を受け、さらなる「Ai GROW」の活用を目指し、3年目は運用計画の共有前に各教員に改めて「Ai GROW」の基本情報を共有。また、どのような場面においても生徒とコンピテンシーを意識した対話を行えるよう、「Ai GROW」のコンピテンシーと学校コンピテンシーの対応表も作成しました。

その上で、年間計画をブラッシュアップ。年間3回の受検は変わらないのですが、それまでのホームルームなどでの受検ではなく、定期考査の時間割に50分間の「Ai GROW」受検時間を組み込んでもらうことにしました。さらに、担任分析、学年分析の他に、生徒が自分で結果を分析する時間を必ず取るようにしています。学年分析は研修という形で教員全員で行う枠組みへと変更しました。

生徒の自己分析は、「追手門モジュール」の時間を用いて、結果レポートを読み込ませるようにしています。気質診断の結果については、自分でも気付いていない気質の傾向も含めてしっかりと受け入れること、コンピテンシーの計測結果では、スコアのアップダウンではなく、現時点の強みを意識すること、スコアが上昇したコンピテンシーについては、次のテストや大きな行事に向けて、さらなる成長を意識した行動を取ることを伝えています。今では、面談で生徒から「Ai GROW」の受検結果に関する話が出てくることもあります。

次に担任分析ですが、今年度は平均と標準偏差の2軸で受検結果をまとめたMVプロットを用いた分析を行ったことで、全体傾向や集団における個人の傾向がつかみやすくなりました。先生方には自分のクラスと隣のクラスや上の学年と比較して違いを見てもらうようにしています。各生徒のコンピテンシーの平均値の高さ、各コンピテンシーにおけるばらつきも確認できます。箱ひげ図に比べるとクラスの様子が視覚的に把握しやすいため、担任からも、経験則とも比較しやすいという声をもらっています。

MVプロットを見てもらった上で研修という形で行った学年分析では、「Ai GROW」の結果のみに注目するのではなく、日常生活と照らし合わせて活用できるよう、各学年目標の達成に必要なコンピテンシー、教員の所感と受検結果を掛け合わせた現状分析、コンピテンシーを伸ばすための対策を考えてもらっています。

※MVプロット分析:平均値を縦軸、標準偏差(バラツキ度合い)を横軸に置いた数値でプロットされた内容から集団傾向を把握可能

 

「Ai GROW」導入4年目に向けて

今後の展望として、保護者会での発信、三者懇談での「Ai GROW」の結果を交えた報告を通して、生徒だけでなくその保護者もコンピテンシーの伸張をしっかりと意識できる環境を作りたいと考えています。また、「Ai GROW」の結果の分析をさらに活性化させ、模試と同じように全教員が「Ai GROW」の結果を見て分析ができるという状況を作りたいと思っています。受検も年3回と決めるのではなく、クラブ活動の大会や行事の前後で受検させ、その変化を見ていくことも検討しています。このようにして学校全体でコンピテンシー・ベースの教育をさらに浸透させ、しっかりと定着させていきたいと考えています。